大なり小なりの破城術

「大小しか答えられない鑑定士を、大魔導戦へ連れていけるか」

学院長はアキュルの杖を折り、『無能』として魔法院から追放した。

【比較鑑定:指定した一項目について、二対象のどちらが大きいか、または等しいかだけを示す】

魔力量を見ても数値は出ない。剣と槍のどちらが重いかなど、持てば分かる。アキュルは城門を出た。

その正面で、帝国の黒壁が地面からせり上がった。

王都を半球状に閉じ込める古代結界。外からも内からも壊せず、空気までゆっくり減らしていく。鳥は空から落ち、低い家では子供から意識を失い始めた。大魔導公ユルカーンが千の雷を落としても、壁は同じ波で震えて受け流した。反射した一条が塔を焼き、次の失敗は市街へ落ちると誰もが悟った。

「結界と等しい振動の魔法なら、打ち消せる」

魔導公は言う。だが黒壁の波は千二十四段階のどれか。総当たりする時間はなく、外れれば雷が反射して都を焼く。

アキュルは学院の音律石を運ばせた。千二十四枚、それぞれ違う魔力の振動を持つ。

「全部試す気か」

「いいえ。半分ずつ捨てます」

彼は黒壁と、中央の五百十二番石を比較した。

――黒壁の振動は大。

低い半分を捨て、残った範囲の中央と比べる。

大。小。小。大。

前世で辞書から言葉を探したとき、一頁ずつめくらず、真ん中を開いて範囲を半分にした。同じことを十回繰り返せば、千を超える候補も一つになる。

最後に、黒壁と七百三十一番石を選ぶ。

――等しい。

ユルカーンはその石を杖の先へはめ、雷の振動を合わせた。放たれた光は壁に弾かれず、静かに溶け合う。黒い半球へ一本の白線が走り、ガラスのように砕け落ちた。

王都へ朝の空気が流れ込み、人々が一斉に息を吸う。

学院長は折った杖の代わりを差し出そうとした。ユルカーンがその手を止め、自分の大魔導杖をアキュルへ渡した。

「数字を一つも見られぬ無能だったな」

魔導公は、千二十四枚のうち一枚だけ残った音律石を指した。

「我らが千回迷う間に、十の問いで正解へ着いた。今日から学院の問い方は、おまえが教えよ」