子ども議会の石
セロ村では、子どもが朝ごとに一里先の泉へ行った。
大人が畑へ出るあいだ、小さな背に水瓶を負わせるのが昔からの決まりだった。井戸を掘ろうという話は何度も出たが、東の者は東へ、西の者は西へと言い張り、毎回そこで終わった。
寺子屋教師のパスカルは、授業机を広場へ運び出した。
机の上には村の地図と、白い小石が五十個。
「今日だけ、井戸の場所を子ども議会で決めます」
大人たちが笑う。
だがパスカルが子ども一人に一票を与えたわけではない。
各家の位置へ石を一つ置き、水を運ぶ者の年齢が低いほど大きな石にした。七歳の子が運ぶ家は拳大、十五歳なら指先ほど。候補地から各石まで糸を伸ばし、その長さと石の重さを掛ける。
計算は広場で、誰でも見られるように行った。
最も負担が小さくなる場所は、東でも西でもない。使われなくなった中央の羊囲いだった。
「うちの畑から遠い」
東の地主が言う。
九歳の娘が、父の家を示す拳大の石を持ち上げた。
「でも、私が泉へ行くより近いよ」
掘削費の分担も、同じ板に書いた。
土地の広さではなく、働ける大人一人につき半日。水運びをしている子どもしかいない家は免除。石工の賃金は村税から払い、余りは寺子屋の屋根に回す。金額も作業日も、子どもが毎日読み上げる。
命令は出なかった。
それでも翌朝、東の地主が最初の鍬を持って来た。西の羊飼いは囲いの柵を外し、母親たちは土運び用の籠を編んだ。子どもたちは地層から出た石を大きさ順に並べ、井戸枠へ渡した。
議会の石が、今度は本物の石組みになった。
十日目、穴の底で土が黒くなった。
パスカルが桶を下ろすと、ぽちゃん、と音が返る。
一番小さな水運び役だった七歳の少女が、縄を両手で引いた。今日は背負うためではない。最初の水を皆に見せるためだ。
井戸枠の横に、子どもたちの書いた看板が立つ。
――朝の水は、ここで汲めます。
――泉までの道は、もう授業ではありません。
翌朝、寺子屋の鐘が鳴ったとき、五十個の小石は机の上になかった。
子どもたちは全員、自分の席に座っていた。