宝箱は砂場の奥
日曜の公園で、三人の大人が一枚の宝の地図を囲んでいた。
マフィアの壬生森フランコは、売上金を隠した場所を示す地図だと思っている。
刑事の天羽玄理は、その受け渡し現場を押さえるため来た。
泥棒の朏しのぶは、駅でフランコのポケットから地図をすった。
紙には、赤い滑り台、三本の桜、砂場の奥に大きな×印が描かれていた。
「箱はどれくらいだ」とフランコ。
「両手で持てる程度」としのぶ。
「中身は現金ですか」と玄理。
「見れば分かる」とフランコ。
しのぶは、二人を分配相手だと思った。
「三等分でいい?」
「組へ戻す金だ」とフランコ。
「組?」と玄理。
「仲間の集まり」
「私は県警の集まりから来ました」
「警察?」
フランコの顔がこわばる。
しのぶは慌てて地図を丸めた。
「まあまあ。まず掘ってから、所属の話は」
「なぜ地図を持っている」とフランコ。
「あなたが落としたから」
「落としていない」
「では、ポケットから自主的に外へ出た」
「すったのか」
「拾う位置が少し高かっただけ」
玄理は二人を交互に見た。
「話が早くて助かります」
三人は砂場へ移動した。
地図には《大人に見つからないよう、静かに掘ること》とある。
「子どもの字みたいですね」と玄理。
「偽装だ」とフランコ。
「犯罪者は丸文字も使う」としのぶ。
赤いシャベルが置かれていた。しのぶが掘り始める。
「深さは?」
「三十センチ」とフランコ。
「地図には『犬一匹ぶん』と書いてあります」
「隠語だ」
「犬は警察を指す」と玄理。
「自分で言うんだ」
やがてプラスチックの箱へ当たった。フランコは周囲を見張り、玄理は手錠を準備し、しのぶはふたへ手をかける。
「開けるぞ」
「証拠保全のため私が」
「中身はうちのものだ」
三人で押し合っていると、黄色い帽子の少女、蓬莱一花が泣きながら走ってきた。
「私の宝箱! お誕生日会で埋めたの!」
箱の中には、動物シール百枚とラムネが入っていた。
フランコは地図を裏返した。裏に《一花ちゃん七歳おめでとう》とある。
「私の地図は?」
玄理がフランコの胸ポケットから別の紙を抜いた。
「こちらでは」
しのぶがすったのは、その隣に入っていた子どもの地図だった。
「では解散ということで」
しのぶが立つ。
玄理は手錠を鳴らした。
「宝探しは、もう一件残っています」