影猟犬の細すぎる鎖

影猟犬ゼクトは、王家の秘密を守るため地下回廊に置かれていた。

黒い巨体は壁の影へ溶け、侵入者を一度も逃さない。その一方で世話人にも噛みつくため、十年前から首輪と鎖を外されたことがなかった。

書庫番ケルドが地下へ降りたのは、紛失した鍵を探すためだった。灯りの外で二つの目が光り、兵士たちは彼を残して扉を閉めた。

鎖が鳴り、影猟犬が飛び出す。ケルドは逃げかけたが、途中で止まった。ゼクトは彼へ届く寸前、首を引かれて倒れた。そのたび咳き込み、黒い毛の下に赤い筋が見える。

成長した身体に、子犬の頃の首輪が食い込んでいる。

「誰も外せなかったのではなく、外そうとしなかったのか」

ケルドは鍵束を床へ置き、上着を脱いだ。武器がないことを示し、少しずつ近づく。

ゼクトが牙を鳴らす。彼は首へ手を伸ばさず、まず鎖の届く範囲に座った。

「噛んでもいい。でも、その後で一つだけ切らせてくれ」

影猟犬は鼻先を彼の肩へ寄せた。古紙と糊の匂いを確かめるように何度も嗅ぐ。やがて伏せたが、目は閉じない。

ケルドは本を修復する小さな革鋏を取り出した。首輪と皮膚の間へ自分の指を滑り込ませ、刃が獣に触れないよう守る。固い革を一度、二度。三度目で切れた。

首輪が落ちると、ゼクトは初めて深く息を吸った。赤く擦れた首をぬるま湯で拭き、柔らかな布を巻く。噛みつく代わりに、犬はケルドの手を一度だけ舐めた。

王は長年の放置を知り、地下守の制度を改めた。そして鍵探しの書庫番を、影猟犬の正式な相棒に任じる。

残された飼育記録には、首輪の寸法を直す申請が毎年却下された跡があった。予算を惜しんだ役人たちは責任を問われ、地下回廊には日光の入る休憩庭が新設される。ゼクトは最初の日、庭へ出ても逃げず、ケルドが戻るまで扉の前で待っていた。

ゼクトは契約の影紋をケルドの足元へ広げ、そのまま大きな頭を膝へ置いた。闇色の毛は見た目に反して火鉢のそばのように温かく、十年分の信頼が重さになって腿へ沈んだ。