涙の出ない玉葱
セオドは王国の尋問官だった。
泣き叫ぶ者を前にしても顔色一つ変えないため、「石の目」と呼ばれていた。
だが無実の農民へ罪を認めさせろという命令書を破った日、その石の目は役立たずとして辺境へ捨てられた。
半年後。
荒れ地の最初の畝で、玉葱の葉が倒れ始めた。
収穫の合図だと、隣村の老婆に教わっていた。
セオドは一本の葉を掴み、真上へ引いた。
土がやわらかく割れ、白い玉が現れる。根には黒い土が絡み、鼻を近づけるとかすかに辛い匂いがした。
二本目、三本目。
今日抜くのは一列だけだ。王国中の罪を暴く必要も、人生をやり直す必要もない。夕食に必要な六個で十分だった。
抜いた跡の穴へ鼻を近づけると、湿った土と玉葱の辛さが混じっていた。六個の形はどれも違う。尋問記録なら不揃いを嫌った彼も、籠の中の不揃いには妙な安心を覚えた。
最後の一個を籠へ入れたとき、黒服の騎手が来た。
「元尋問官セオド。反乱容疑者の取調べを任せたい。復職状だ」
差し出された封書には、司法卿の赤い印があった。
セオドは受け取り、玉葱籠の底へ置いた。
「返事は?」
「今、目が離せない案件がある」
騎手が畑を見回す。
「どこに?」
「ここに六件」
小屋で玉葱の皮を剥き、一個を薄く切る。
刃が入るたび、つんとした香りが強くなった。目の奥が熱くなり、視界がにじむ。
王都で何を見ても出なかった涙が、頬を一筋流れた。
セオドは驚き、次に笑った。
鉄鍋で干し肉を炒め、玉葱を山ほど入れる。
じゅう、と音がして、白い輪が透き通っていく。辛い匂いは消え、代わりに甘く香ばしい湯気が立った。
少量の麦酒を注ぎ、黒パンを添える。
騎手は戸口でまだ待っていた。
「泣いているのか?」
「玉葱のせいだ」
「復職が嬉しいのではなく?」
「それは、笑っている理由にもならない」
飴色になった一匙を口へ運ぶ。
舌の上でほどける甘さは、脅して得たどんな自白より正直だった。
セオドはもう一枚パンを切り、騎手の前にも置く。
「急ぐなら一人で戻れ。待てるなら食べていけ」
復職状は籠の底で土に汚れたまま、鍋だけが静かに煮えていた。
石の目から出た最後の涙は、もう悲しみのものではなかった。