灯る床の授業鐘

オルフェは、学校の鐘が鳴ったことを一度も聞いたことがない。

耳が聞こえない彼は、授業の始まりも終わりも、周囲の子が立つ気配で知った。教師は黒板に背を向けたまま話し、答えられなければ「ぼんやりしている」と廊下へ出した。林業村には同じ子が三人いたが、やがて全員が学校をやめた。

十六歳になったオルフェは、村政会で紙を掲げた。

『鐘を大きくするのではなく、見える鐘を作ってください』

新しい代官セヴランは、その提案を読み上げず、全員へ回した。費用は木材の搬出税から出す。家で使う薪や小規模な伐採は無税。町外へ売る丸太だけ、太さに応じて銅貨を納める。徴収本数と金額、ランプ、床板、教師研修への支出は、製材所前の板へ図と数字で示すことにした。

材木商は「三人のために」と渋った。だがセヴランは、鐘を聞き逃す幼児、耳の遠い老人、騒音の中で働く者にも役立つと説明した。すると床職人が、踏むと教室全体へ振動が伝わる板を考えた。硝子工は鐘と連動して光る青いランプを作り、子どもたちは手話を一日一つ覚えると決めた。

教師だけが不安そうだった。

「私は手で話せません」

オルフェは笑い、紙へ書いた。

『私が教えます。代わりに、あなたは私へ歴史を教えてください』

授業方法を決める会議では、聞こえる者だけで話を進めないよう、発言を一度紙へ書いて壁に貼った。オルフェが読んでから次へ進む。その遅さに苛立つ者もいたが、読み返せる記録のおかげで、後から「そんな約束はしていない」と言う者はいなくなった。

開校し直した最初の日、教師は黒板の前で顔を上げたまま話した。重要な語は文字にし、質問の時は青い札を上げる。聞こえる子も聞こえない子も、同じ札を使った。かつて廊下へ出されていた三人は、今は前列にいた。前だから特別なのではない。全員が教師の口元と黒板を見られるよう、机を半円へ並べた結果だった。

授業の終わり、校鐘の綱が引かれる。

音より先に床がやさしく震え、窓辺のランプが青く灯った。

誰かの合図を待たず、教室中の手が一斉に「また明日」と動いた。