番号札の所有者

皆月迅は首輪の正面から「1」の薄板を引き剥がし、三番扉の数字へ重ねた。磁石が吸いつき、扉には大きな一だけが残る。迅はそのまま取っ手を下げ、敷居を越えた。

花房朱里と鷺沼要は、それぞれ二番と三番へ走り出したばかりだった。

「お前の扉は一番だ!」

要が叫ぶ。

「違う。僕の番号が付いた扉が、今ここにある」

規則は首輪の装着と同時に示された。

――自分の番号が付いた扉を最初に通過した者を勝者とする。

迅の首輪には一、朱里には二、要には三。正面の扉にも同じ数字が並んでいた。三人は、割り当てられた番号と同じ扉へ向かう競走だと思った。ところが開始位置から一番までは最も遠く、三番が最も近い。迅だけが不利に見える配置だった。

彼は説明中、首輪の数字がわずかにずれたことに気づいた。装置本体へ刻印されているのではない。交換式の磁気札だ。参加者を入れ替えるたび、係員が番号を貼り直すためだろう。

規則は「最初に与えられた番号の扉」とは言わない。「自分の番号が付いた扉」だ。迅が所有する一の札を三番扉へ付ければ、その瞬間、そこは自分の番号が付いた扉になる。

要も首輪から三を外そうとしたが、走りながらでは爪が入らない。迅は開始前に端を浮かせていた。朱里は二番へ到達したものの、まだ取っ手を下げる前だった。

通過センサーが迅を読み取る。扉の上の表示は、元の三ではなく、表面にある一を認識した。

〈参加者番号一。扉表示一。一致。最先着〉

要が「札は扉の備品じゃない」と抗議する。

「付いている物の所有者まで、規則は指定していない」

迅の首輪が開いた。剥がした箇所には番号のない黒い面だけが残る。

主催者は距離差で絶望を作ったつもりだった。だが番号を人に固定せず、交換可能な札にしたのは運営側だ。

迅は三番だった扉の内側から、重ねた一を指で弾いた。

「僕が番号に従う必要はない。番号の方を、僕の行く扉へ連れてくればいい」

一の札が澄んだ音を立て、勝者用の錠が完全に開いた。