白い体力バー
藤堂ヒサメが号笛を吹くと、味方兵の体力バーが青く染まった。
《所有色表示》
青:あなたの所有対象
赤:他者の所有対象
白:所有者なし
王都内戦で、誰もが青を味方、赤を敵だと思っていた。ヒサメも赤い兵を斬り、青い兵を守ってきた。
だが倒れた赤兵ドラウが、血を吐きながら言った。
「なぜ、持ち主が違うだけで敵なのです」
腰の号笛を調べる。
《指揮官の笛》
音を聞いたNPCの所有者を、使用者へ変更する。
味方になったのではない。所有物になっただけだった。
王宮前では、青い兵と赤い兵が殺し合っている。笛を持つプレイヤーが変わるたび、色も簡単に反転した。昨日の仲間が今日の敵になる理由を、誰も疑わなかった。
ヒサメは笛を石段へ置き、剣の柄で砕いた。
青い体力バーが一斉に白へ変わる。
「裏切ったな!」
ギルド長がヒサメを攻撃対象にする。所有者を失った兵たちは動かない。命令が届かないからではない。互いの顔を見て、戦うかどうか迷っている。
ドラウが立ち上がった。白いバーのまま、ヒサメとギルド長の間へ入る。
「私は彼を守る。彼の物だからではなく、笛を壊したからだ」
別の兵は王宮を守ると決め、別の兵は負傷者を運び始めた。選択はばらばらで、戦列は崩れた。攻略としては最悪だ。だが初めて、色でなく理由のある行動だった。
白い体力バーが王都を満たす。赤と青の戦争は、どちらも軍を所有できなくなった瞬間に終わった。
《王都制圧戦:勝者なし》
《所有リンクを全解除》
所有色を失ったプレイヤーの指揮画面には、命令失敗が並んだ。それでも白い兵士たちは止まらず、自分の声で互いを呼び合う。
ドラウは敵だった兵へ手を貸した。
「昨日まで赤かったことを、謝る必要はない。色をつけたのは私たちではない」
王宮の旗も最後には白く裏返された。
白は命令を受けないため、隊列としては弱かった。けれど倒れた者を敵味方なく運ぶ動きは、どの指揮官の作戦より速い。勝つための軍は消え、その代わりに生き残るための群衆が生まれた。
《白は中立を意味しません――誰の物でもない者が、自分で選ぶ前の色です》