蝶を割る石刃

石段の中央に、黒曜石の蝶が置かれていた。

夜明けの光を受け、二枚の翅だけが青く光る。イツァム・コヨルとナウィ・トレクが仕えた王子の胸飾りだった。王子は敗れ、二人は名も土地も失った。イツァムは王子を舟へ逃がそうとし、ナウィは神殿で最後まで戦えと命じた。王子はどちらも選べず、石橋の上で矢に倒れた。以来、二人は相手の策なら王子が生きたと思っている。

湖上都市の将は、蝶を拾った方を百人の傭兵頭にすると言った。明朝、敵は湖の堤を切る。傭兵頭は水門へ走り、閉じるまで石段を守る。蝶は飾りではなく、百人が従う王子の最後の印だった。

ただし、決闘の間は拾ってはならない。相手から血を一滴取った後でのみ、手にできる。

二人は黒曜の刃を並べた木剣を構えた。ナウィの刃は新しい。イツァムの刃は欠け、歯の抜けた獣の顎に見える。替え刃を買う銅豆がなかったのだ。湖面の市では、浪人の命より黒曜石一枚の方が高かった。ナウィは新しい刃を指で弾き、その澄んだ音を聞かせた。貧しさまで斬れると思っている音だった。ナウィはそれを貧しさと見た。イツァムは、欠けた位置を一晩かけて選び直していた。

最初の打ち合いで、ナウィはイツァムの肩を浅く裂いた。

血が一滴、蝶の翅へ落ちた。

「終わりだ」

ナウィは胸飾りへ手を伸ばした。

イツァムは自分の武器を石段へ叩きつけた。

黒曜の刃が一斉に砕け、黒い欠片が朝日に散る。ナウィは笑い、蝶を取るより先に、とどめを刺そうと踏み込んだ。刃を失った木剣は、ただの棒に見えた。

だが折れ残った基部には、短く太い石刃が一枚だけ残っていた。

長い刃は広場で強い。石段の一歩では、短い牙の方が速い。

イツァムはナウィの長剣の内側へ入り、残った一枚で腿を切った。ナウィの膝が落ちる。イツァムは棒の先をその首へ当てた。

「先に血を取った」

ナウィが唸った。

「蝶を拾わなかった」

「拾えば背を向ける」

イツァムは答えた。王子を守れなかった二人には、もう一度背を向ける権利がなかった。

彼は黒曜の蝶を拾い、血を親指で拭った。

神殿の上で、緑の羽根旗が一斉に上がった。