討伐報酬の二重印
冒険者ギルドの受付主任バルガは、初心者の討伐報酬を半分抜いていた。
装備を直せず次の依頼で負傷した者も、宿代が払えず路地で眠った者もいる。バルガは彼らを「自己管理のできない三流」と掲示板へ貼り出し、抜いた金で自分の主任室に革張りの椅子を入れた。
「新人税だ。文句があるなら依頼失敗にする」
薬草採取から戻った少女フェナが規定額を求めると、バルガは銅貨袋を床へ投げた。
「五十枚で十分だ。帳簿には百枚払ったと書く。お前が落としたことにすれば終わりだ」
帳簿係の青年ルクスが止めると、バルガは彼の机から支払印を奪った。
「明日の監査で不足が出たら、こいつが横領したことにする。見ておけ」
彼は支払票へ百枚と記入し、主任印と帳簿係印の両方を押した。さらにルクスへ、五十枚しか入っていない袋を封じさせる。
ルクスは封をしながら、何も言わなかった。フェナの手袋には、薬草を守って魔物に噛まれた跡がある。五十枚では治療代にもならない。それでも彼は袋を数え直し、封糸を丁寧に結んだ。新式の封糸は前日に本部から届き、バルガ自身が受領証へ署名していた。
翌朝、王都本部の監査官が来た。バルガは予定どおり、ルクスが報酬を抜いたと訴える。二つの印がある以上、帳簿係が共犯だとも言った。
監査官は支払票を魔導板へ置いた。ギルド印は押した者の魔力を色で記録する。主任印も帳簿係印も、同じ濁った赤――バルガの魔力だった。
「印を貸しただけだ!」
バルガは叫んだ。
そこでフェナの銅貨袋が開かれた。袋の封糸は、閉じた瞬間の中身と命令者の声を保存する新式だった。五十枚という数字とともに、声が響く。
――帳簿には百枚払ったと書く。
――不足はルクスの横領にする。
バルガは新式だとは知らなかったと口を滑らせた。監査官は、それが横領を否定する言葉ではないと告げる。
ギルド長は壁から主任章を外し、黒札を読み上げた。
「受付主任バルガ。永久除名および報酬詐取の罪による衛兵への引き渡しを命じる」