誰の背にも載らない橋

城下町の吊り橋は、一本の鎖ではなく、鬼魔族グランゾの背中で上がっていた。

橋塔の地下で、彼は巨大な主軸へつながれている。胸の歯車印が回るたび筋肉が強制的に縮み、昼夜を問わず橋を引き上げた。町長ペギルは修理技師セヴェラへ、主軸の所有契約まで渡した。地下には窓も時計もなく、グランゾは橋が上がる回数だけで朝と夜を数えていた。

「技師殿の印を中央歯車へ刻めば、こいつは百年でも働く」

セヴェラは地下を一周し、壁際に積まれた石の錘を見つけた。昔の設計図どおりなら、橋は錘だけで上がる。だが町長は整備費を惜しみ、グランゾを生きた動力へ替えていた。

「鎖を外すぞ」

「橋が落ちる」とグランゾは答えた。「上に人がいる」

「だから先に錘を戻す」

セヴェラは三日かけて滑車を直し、最後に所有歯車へ鑿を当てた。

ペギルが彼女の腕をつかむ。

「印を移せば済む話だ! 自由にして何の得がある」

「橋は町のものだ。彼の体ではない」

槌が落ちる。

歯車印の中心が抜け、グランゾの胸から鉄粉が噴いた。主軸につながる鎖が一本ずつ外れ、石床へ轟音を立てる。同時に錘が下がり、橋は誰の苦痛も借りず、ゆっくり持ち上がった。

グランゾは自分の背を伸ばした。長く曲げられていた骨が鳴る。

「外の道は東へ続く」

「追わないのか」

「修理代を請求する相手は町長だ。君ではない」

彼は朝霧の中へ歩いていった。橋を渡る途中で一度立ち止まり、誰にも引かれていない自分の影を、珍しいもののように長く眺めた。

一週間後、大雨で川が増水した。壊れた荷車が橋の中央に止まり、取り残された子どもを救うため、セヴェラは橋を途中で固定しなければならなかった。ところが町長が整備費を抜いた予備爪が折れる。

橋が傾く寸前、地下から太い腕が主軸を受け止めた。

戻ってきたグランゾだった。

「また働かせるつもりはない!」

「知っている。今は俺が止めたいから止めている」

子どもが渡り終えると、彼は主軸から手を離した。そして昔の所有鎖についていた大鉤をセヴェラへ差し出す。

「これを溶かして、新しい安全爪にしてくれ。報酬を払うなら、次の橋も一緒に直す」

彼女が握ったのは鎖ではなく、並んで働くための材料だった。