赤黄緑の三枚札

大地震で市場の屋根が落ち、負傷者が治療院の門へ押し寄せた。

泣き叫ぶ者、歩けない者、血まみれでも黙っている者。治療師十二人に対し、負傷者は百七十三人。声の大きい順に診ていたため、包帯を求める軽傷者で入口が塞がっていた。

元・催事係のカシアは、赤、黄、緑の布札を三束持って門へ上がった。

「自分で歩ける方は、緑の旗へ!」

ざわめきの中から百人以上が動いた。擦り傷や軽い打撲の者を広場へ集め、互いに水と布を渡させる。残った者を治療師が一目ずつ確認し、今すぐ処置が必要な者へ赤、待てる者へ黄を結んだ。

門前の人垣は三分で三列になった。

赤札は七人。

黄札は二十九人。

緑札は百三十七人。

治療師長は迷わず赤の列へ走った。静かに座っていた石工の腹部出血、瓦礫の下から出た少女の呼吸障害、意識を失った老人。さっきまで叫び声に埋もれていた三人へ、最初の五分で手が届く。

一刻後、重傷者七人は全員処置を終えていた。入口で押し合う者はなく、緑の列では自分で歩ける者が水運びまで始めている。

赤札の少女は治療開始から九分で呼吸が整い、石工は輸血魔石一個で手術へ入り、老人は意識を取り戻した。黄の列では待つ間に悪化した者が二人だけ出たが、札を赤へ替える役がいたため、すぐ前列へ移された。色は一度決めた運命ではなく、状態が変われば結び直す目印だった。カシアは三列の間を走り、札を五枚付け替えた。

市長は「色で命を決めたのか」とカシアを責めた。治療師長は血の付いた手で、七枚の赤札を机へ置く。

「命を決めたのではない。限られた手を、先に必要な者へ届かせた」

前日の演習では、百人を診察順へ並べるだけで二十八分かかっていた。今日は百七十三人が三分で分かれ、最初の治療開始まで四分。数字の前で、市長は口を閉じた。

夕刻、救援隊本部から三色の布札一万枚が発注された。

発注書の監修者欄には、治療術を持たないカシアの名があった。

「王国災害振り分け隊の初代隊長を頼む」

治療師長が差し出した赤い腕章を、カシアはその場で受け取った。