追放盾士の再採用試験
王都広場に設けられた再採用試験場で、ハクレンは昔の仲間と向かい合った。
三か月前、勇者隊は彼を「攻撃に参加しない寄生盾」と追放した。ところが次の遠征で負傷者が続出し、世間の評判が落ちると、隊長は慈悲深い顔で再加入を提案してきた。
「本当に成長したのなら、我々の一撃から仲間を守ってみろ」
守る相手に指名されたのは、追放の夜にただ一人ハクレンを追ってきた治癒師ミフレアだった。勇者隊長は彼女まで裏切り者と呼び、観客へ聞こえるように笑う。
「失敗すれば二人とも冒険者資格を失う。戻りたいなら、身の程を示せ」
ハクレンは返事をせず、ミフレアの前で片手を上げた。かつての隊列と同じ位置だった。ただし今度は、背後から命令も侮辱も飛んでこない。
追放後、勇者隊は最初の迷宮で全員が負傷した。これまで浅かった魔物の爪も、軽かった罠の矢も、ハクレンが抜けた途端に本来の傷を残した。それでも隊長は自分の判断ミスを認めず、『敵が急に強くなった』と報告していた。
第一撃は、勇者の《竜断》。黄金の斬撃が地面を裂き、爆煙が二人を覆う。隊長は剣を振り抜いた姿勢で笑い、すぐに顔をこわばらせた。
斬撃音のあとに、治癒師の詠唱が聞こえなかった。
以前なら誰かが掠り傷を負うだけで、ミフレアは反射的に治癒を唱える。だが煙の中は静かだった。治す傷が一つもないのだ。
煙が晴れる。ハクレンは片手を上げた同じ姿勢で立ち、ミフレアは彼の背中へ新しい隊章を縫いつけていた。二人だけで作った、名もないパーティーの印だ。糸一本、切れていない。
「防御魔法を隠していたのか! それを我々に使っていれば――」
「毎日、使っていた」
広場の空気が止まった。隊長が成果だと思っていた無傷の遠征記録は、すべてハクレンの背中に守られた結果だった。
隊長は羞恥を怒りへ変え、聖剣の封印を解く。《勇者終式・天竜葬》。観客用結界まで揺らす光が落ち、煙が広場を白く塗り潰した。
それでもハクレンは同じ姿勢だった。ミフレアは最後の一針を通し、隊章を軽く叩く。
隊長がなおも一撃を求めて剣を上げた瞬間、聖剣は鍔元から砕けた。