霜の家計簿

牧草地の村カレナでは、冬の終わりに必ず乳児が痩せた。

山羊乳は豊富なのに、秋のうちに作ったチーズを商人へ売り切ってしまうからだ。家畜税も年によって違い、役人に賄賂を渡した家だけ少なく済んでいた。

女領主ユノは、霜の朝に家計簿を一冊、広場へ持ち出した。

「山羊一頭につき税は小銭五枚。それ以上はなし。現金の代わりに、チーズ一輪でもよい。ただし受け取ったチーズは領主館へ運ばず、村の共同庫へ入れる」

共同庫からは、乳児と妊婦のいる家へ週一切れ。残りは吹雪で家畜を失った家へ貸し出し、春の乳で返す。誰が納め、誰が受け取ったかは、家計簿の左右に同じ行で記す。数字の読めない者のため、山羊とチーズの絵印も付けた。

大牧場主が問うた。

「山羊百頭なら、貧しい家の二十倍払うのか」

「はい。税は山羊の数だけです。私の牧場も百二十頭。最初に書きます」

ユノが自分の額を記すと、ざわめきが止まった。前領主は税を免れていたからだ。

翌日、共同庫の掃除に来たのは、支援を受ける側の若い母親だった。彼女は「ただ貰うのは落ち着かない」と棚布を縫った。大牧場主は石壁の隙間を塞ぎ、山羊飼いたちは熟成の順番を決めた。義務ではない。預けた一輪が、来年の自分の子を救うかもしれないと分かっただけだった。

最初の配給日、双子を抱いた母親へ二切れずつ渡すと、古い徴税吏が「貧民への贈り物」と帳面に書こうとした。

ユノはその文字を消した。

「贈与ではありません。規則に基づく配給です」

母親は俯かず、受取欄へ自分で印を押した。大牧場主も、病気で寝込む羊番の代理として隣の行へ署名した。誰が与える側で誰が貰う側かは、季節ごとに入れ替わる。

夕暮れ、税として納められた最初のチーズに、ユノが村印を押す。次に大牧場主が押し、若い母親が棚へ置いた。

家計簿の最初の頁には、納入と配給が一本の線で結ばれた。

窓の霜が白く広がる中、共同庫の棚には春まで残る丸い月が一つ灯った。その隣には、次の家が納める場所が同じ幅で空けてあった。