青い箱の行方

守屋芙季の評価面談は、冷蔵医薬品が一箱消えた直後に始まった。

物流センターへ配属されて九か月。棚卸し誤差の責任欄には芙季の名があり、今朝その箱を扱った派遣社員は、すでに誤出荷の確認書へ署名しかけていた。

「あなたの班は確認に時間をかけるわりに、在庫精度も落ちている」

課長は出荷画面を示した。青い保冷箱は、棚Aから持ち出された後、行方が切れている。冷気の残る箱には、一定時間を超えると色が変わる温度札が貼られていた。今は白いが、出荷口で迷えば赤へ近づく。締切便は十分後。規定では欠品として処理し、代替品を別倉庫から送ることになる。

芙季は面談を止め、箱に付いた端末番号を聞いた。朝、その端末だけ電池を交換していた。履歴を見ると、交換後の最初の読み取りが、直前に使った棚Aのまま記録されている。

彼女は出荷口へ走り、棚Aではなく梱包台Cの青い箱を開けた。中には探していた薬があった。箱の表面はまだ冷たかった。端末が古い位置情報を保持し、正しい箱を誤った棚へ登録していたのだ。過去の電池交換日を調べると、小さな在庫ずれが起きた三日も同じ端末が使われていた。温度表示は規定内だったが、気づかず通常便へ載せれば、配送中に保冷時間を超えていた。

芙季は便を一度止め、薬を専用便へ移した。派遣社員には確認書を返し、「署名より先に、端末の番号を一緒に見てください」と伝えた。さらに、電池交換後は空の箱を一度読み、位置情報が更新されたことを確かめる手順を作った。

面談室へ戻ると、課長は配送の五分遅れを指摘した。

「班長になれば、締切と安全の両方に責任を持つことになる」

芙季は班長任命書を読んだ。評価項目には〈時間内出荷率〉しかなく、安全確認で止めた便も遅延に数えられる。

彼女は余白へ〈安全停止は遅延評価から除外し、原因記録を必須とする〉と加えた。

課長が修正を承認すると、芙季は任命書へ署名した。最初の班長業務として、新しい電池交換票を青い箱の蓋へ貼った。