香りから始まる黄金鍋
「乾いた物を同じ細かさへ砕くだけ? 粉屋なら石臼を使う。無能だ」
王宮料理試験で、クレアムは野菜洗いへ落とされた。
【固有技能:《均一粉》――乾燥した材料一種を、望む大きさの均一な粒へ砕く】
味は変わらず、量も増えない。大司厨ボナールは「剣を粉にしても敵は倒せぬ」と笑った。
その年、王都では肉が不足し、戴冠祭の主菜が用意できなくなった。倉庫にあるのは豆、根菜、古い香辛料だけ。貴族へ豆煮込みを出せば、新王の貧しさを諸国へ宣伝することになる。料理長たちは残った肉を薄く切って百皿へ散らそうとしたが、それでは貧しさを百回見せるだけだった。倉庫の香辛料も、粗く砕かれたまま香りを失いかけていた。材料の値段ではなく、香りを引き出す順番で皿の格を上げるしかない。安い材料にも、扱い方でしか現れない価値がある。
クレアムは香辛料を一種類ずつ《均一粉》にした。大きさがそろえば、焦げる粒と生の粒が混ざらない。油へ最初に硬い種、次に香りの強い粉を入れ、弱火で立ち上がる匂いを待つ。前世で覚えた、香辛料を油に咲かせる手順だった。
玉葱は飴色まで炒め、豆は半分を潰してとろみへ変える。焼いた根菜を加え、最後に酸味と少量の乳を落とす。肉は一片もないのに、黄金色の鍋から複雑な香りが広間まで流れた。
ボナールは同じ材料で作った従来の豆汁を並べた。こちらは粉の粗さがばらばらで、舌に苦い粒が残る。新しい鍋は香りが油へ均等に移り、一口ごとに味が変わらない。
戴冠祭で、諸侯は皿を空にした。肉がないことへ気づいたのは、三杯目を求めた後だった。
「貧窮を隠す料理か」と隣国の使節が問う。
クレアムは首を振る。
「肉がないから作ったのではありません。豆と香辛料で、肉を必要としない料理を作りました」
ボナールは野菜洗いの札を鍋の火へ投げた。
「粉の大きさしか整えられぬと思った」
大司厨は金の匙をクレアムへ渡す。
「だが、おまえは材料の身分を整えた。今日から王国の一皿目は、そなたが決めよ」