いじめられた日の同窓会
珠美の顔を見ると、十七歳の教室へ戻る。
私の弁当に「貧乏くさい」と言い、文化祭の班から外し、好きだった人へ家庭の事情をばらした。卒業後も、私はその傷を何度も友人へ話した。言葉にすれば、珠美のしたことをなかったことにされずに済む。
同窓会へは、謝罪を聞くために参加した。
バッグには、当時珠美から渡された紙を入れていた。〈真琴がいると空気が悪くなる〉。青いペンの文字を、私は十年保存してきた。紙がほとんど黄ばんでいないのは、密封袋に入れていたからだ。
会場で珠美は私を見ると、「久しぶり」とだけ言った。
反省していない。私は皆の前で紙を出し、あのときのことを覚えているか尋ねた。珠美は文面を読み、首を振った。
「これ、私の字じゃない」
予想通りだった。加害者は忘れる。私は卒業アルバムも開いた。珠美の寄せ書きだけ黒いペンで塗りつぶされている。自分が読めないようにしたのだと思っていた。
もう一つ、アルバムの私の写真には、小さく〈嘘つき〉と書かれていた。誰が書いたか分からないが、珠美が皆へそう呼ばせたに違いない。
担任だった先生が、紙を光に透かした。
「これ、学校の紙じゃないね」
端に薄く、私が高校時代に使っていた塾のロゴが残っていた。青いペンも、アルバムの〈嘘つき〉も、私の筆箱にいつも入っていたものと同じ型だった。
珠美が古い携帯電話を出した。保存されていたメールには、当時の私からの文章が並んでいた。
〈珠美があなたの悪口言ってたよ〉
〈文化祭、珠美抜きでやらない?〉
〈あの子の家、借金あるんだって〉
私は説明した。珠美が先に私を嫌っていると感じたから、傷つく前に距離を作っただけだ。皆が彼女を避けたのは、私のせいではない。
珠美は謝罪を求めなかった。ただ、私が持ってきた紙を返した。
「これを書いた日のことは、覚えてる?」
もちろん覚えている。震えながら、彼女の筆跡をまねた夜だ。
会場を出てから、私は紙をもう一度密封袋へ戻した。
袋の表には昨夜の日付で、〈証拠品・珠美からの脅迫文〉と私の字で書いてあった。