一筋の水路に夕日が乗る
鉱山奴隷だったトゥエラには、岩の声が聞こえた。
その力で王家の金脈を見つけても、褒賞は自由ではなく、次の坑道だった。彼女が「水の音もする」と報告した日、監督官は採掘を遅らせる妄言だと怒り、古い鶴嘴と荒れ地を与えて追放した。
鶴嘴の名は《水聴き》。振り下ろすたび、地中の水が近い方向へ澄んだ音を返す農具だった。
辺境の畑は乾き、細い泉だけが斜面の上に湧いている。水を運ぶ桶は一つ。全部を潤すなど無理だった。
トゥエラは初日の仕事を、泉から畑の端まで溝一本と決めた。
一打。
かん、と岩が鳴る。右では鈍い。左へ半歩ずらすと、音が高くなった。
二打、三打。鶴嘴は固い地面を砕くのではなく、水が通りたがる継ぎ目だけを開いていく。土の下から湿り気が現れ、冷たい匂いが鼻へ届いた。
手の豆が破れても、監督官の笛は鳴らない。休めと言う者も、急げと言う者もいない。だから彼女は自分で一度休み、自分でまた振り上げた。
溝があと三歩というところで、大きな石が道を塞いだ。昔なら監督官が背後から鞭を鳴らしただろう。
トゥエラは鶴嘴の音を聞き、石の右ではなく左を浅く削った。水は力で割る道より、無理なく曲がれる道を選ぶ。彼女自身にも、そんな道があってよかった。
最後の一打で、泉の水が細い溝へこぼれた。
銀の筋が土の間を走る。夕日を一枚乗せ、曲がらず畑の端へ届いた。ほんの一筋。それでも乾いた土が暗く色を変え、湯気にも似た土の香りを上げる。
トゥエラはその水で小鍋を満たし、蕎麦粉の団子を煮た。団子が浮くころ、元鉱山主の紋章をつけた使者が現れた。
「坑道が崩れました。戻れば鎖を外すとのお達しです」
差し出された契約書には、また細かな文字が詰まっていた。
トゥエラは受け取り、封を切らず、鶴嘴の柄の下へ置いた。道具が倒れなくなる。
「鎖なら、もうここにない」
椀から白い湯気が上がる。水路では夕日が流れ続けていた。
彼女は団子を一つ噛み、誰にも許可されずに引いた水の味を、ゆっくり飲み込んだ。