予備のドレス

瑠衣の結婚式から、私はブライズメイドを外された。

ドレスも靴も、全員分を私が選んだのに、前日に「来ないで」と連絡が来た。

私は予備のドレスを持って式場へ向かった。瑠衣の寸法は、本人より正確に覚えている。肩幅、胸下、二の腕。採寸表には、本人へ見せない「要修正」の欄も作っていた。結婚式の写真は一生残るから、少しくらい痛くても美しく見せる必要がある。試着のたびに採寸し、太った時は黙って縫い代を詰めたからだ。

控室の前で、別の友人が私を見るなり裁ちばさみを隠した。それも妙だった。これまで衣装の糸が切れたり、靴の飾りが落ちたりするたび、私が裁縫箱から直してきた。皆は泣きながら「澄麗がいてよかった」と言ったものだ。私は壊れた衣装を何度も直してきた、いちばん頼れる人なのに。

「今日も何か起きると思った?」

問いかけると、瑠衣が中から出てきた。着ているのは、私が却下した簡素なドレスだった。

友人たちは映像を見せた。衣装店の防犯カメラに、私が一人で戻り、ファスナーへ糸を噛ませる姿が映っていた。予約時刻を一時間ずらしたメールも、差出人は瑠衣に見えるが、接続先は私の端末だった。別の日には靴の留め具を緩め、予約メールをキャンセルしていた。

私は故障を先に見つけ、全部直した。瑠衣が別の友人へ相談しようとすると、「皆も準備で余裕がない」と止めた。頼る相手が増えれば、指示が食い違って失敗するからだ。瑠衣が不安で泣くたび、私だけは味方だと抱きしめた。困る前に壊しておけば、本番で大事故にならない。

「私を必要にするためだったんでしょう」

瑠衣は、私が作った進行表も席次も捨てたという。仲良し四人は、私を外して式をやり直す準備をしていた。髪型も余興も席順も、私が却下した案を一つずつ戻したという。瑠衣は不格好なほど大きく笑っていた。

警備員に腕を取られた時、予備のドレスが床へ落ちた。

私の部屋に残した瑠衣の本物のドレスには、まだ誰にも見つかっていない切れ目が一本ある。