冷凍ご飯の星
大学生の央佳は、日曜の夜に五日分の弁当を作る。
一人暮らし二年目。節約のため、炊いたご飯と同じおかずを五つの保存容器へ詰め、冷凍する。月曜も金曜も、鶏そぼろと小松菜だ。
見分ける必要はないのに、容器の蓋には曜日を書いた星形のシールを貼っていた。母が入学祝いにくれたものだ。
ある木曜日、電子レンジから出した弁当の中央だけが冷たかった。温め直す時間はなく、央佳は大学の中庭で、冷たい部分を崩しながら食べた。
同じゼミの荘司が隣へ座り、学食のカレーを広げる。
「毎日ちゃんと作って偉いな」
「毎日は作ってない。日曜の私が全部やってる」
「じゃあ、日曜の君が偉い」
その言い方がおかしくて、央佳は笑った。
翌日、金曜の星がついた容器を開けると、そぼろの上に小さな海苔の星が載っていた。昨夜の自分が置いたのではない。木曜の夜、遊びに来た妹の仕業だと気づいた。
メッセージには〈茶色すぎたので宇宙にしました〉とある。
央佳は海苔を崩す前に写真を撮った。食べれば味はいつもと同じで、端だけ少し乾いている。けれど週の最後まで辿り着いた印のようで、ゆっくり噛んだ。
日曜、今度はおかずを二種類作った。そぼろ三つ、焼き鮭二つ。蓋へ月から金までの星を貼り、金曜だけ金色にした。
冷凍庫に容器を並べると、白い冷気が頬へ触れた。未来の自分へ渡す五つの弁当は、作りたての温度を失っても、開ける日まで静かに待っている。
翌週の木曜日、荘司が小さな味噌汁を持ってきた。冷凍弁当の中央がまた少し冷たくても、熱い汁と交互に食べれば気にならない。央佳は金曜の星を一枚分けた。彼のカレー容器に貼られた金色は場違いだったが、昼休みが終わるまで剥がれず、冬の日を反射していた。
金曜の夜、空になった五つの容器を洗って重ねた。蓋の星は湯に濡れても剥がれない。央佳は冷凍庫の空いた棚を拭き、次の日曜に何を詰めるか考えた。未来は一週間分なら、味つけを選べる気がした。