分割番号ゼロ四
ファイルは、三の次に五が並んでいた。
高遠史緒警部補は、開示資料の一覧を指でなぞった。公園で高校生が警察官に撃たれた事件。ボディーカメラは五分ごとに自動分割され、提出された映像は001、002、003、005。捜査報告には「機器障害により004は生成されず」とある。
「欠番は珍しくない」
園部検事が向かいで言った。
「重要なのは五番だ。高校生が拳銃を拾おうとする場面が映っている」
史緒は五番ファイルの内部情報を開いた。この機種は改ざん検知のため、各ファイルの末尾に次の番号と暗号値を記録する。三番の末尾には、次が004とある。五番の冒頭には、直前ファイルの暗号値が残っていた。
004は生成されていた。
そして削除されている。
「破損した可能性はある」
「破損なら一覧に残ります。削除命令を受けたときだけ番号ごと消える仕様です」
「誰が消したかは分からない」
「だからこそ、存在しなかったとは書けません」
園部は開示期限の赤い付箋を剥がした。
「四番が何を映していたかも分からない。撃たれた少年には強盗の前歴がある。現場には拳銃もあった。欠番一つで、警察官を被疑者扱いするのか」
五番の冒頭、少年は地面に伏せている。拳銃は画面の左端、警察官の靴の近くにあった。四番には、そこへ至る五分が入っていたはずだ。
「開示一覧には『不存在』で処理済みだ」
園部は声を落とした。
「修正すれば、県警だけでなく検察も、今まで欠番を見落としたことになる。君の上司も署名している」
史緒の父も警察官だった。組織は間違えることがあるが、間違いを正す仕組みがある、と教えられた。今、目の前にあるのは仕組みではなく、署名が積み上がった壁だった。
彼女は開示一覧の004欄を選択した。「機器障害・不存在」を消し、「生成後に削除。内容不明。暗号値のみ残存」と入力する。備考には、五番の冒頭位置と拳銃の所在も記した。
園部が端末を閉じようとした。
史緒は先に開示確定ボタンを押した。弁護側へ送られる資料一覧に、存在しないはずの四番が戻った。
映像は再生できない。それでも欠けた五分は、初めて証拠になった。