十センチずつ築く城壁

新しい土塁は、完成するたび雨で崩れた。土を一気に腰の高さまで盛り、上から踏み固めていたため、表面だけ硬く、中は泥のままだった。

敗責を負わされた若い工兵ザハルは、前世の道路工事で見た方法を思い出した。

「厚く盛るのをやめます。掌一枚ずつ固めるんです」

嘲る将校の前で、彼は二つの試験壁を作った。同じ土、同じ水、同じ人数。一方は従来通り一度に盛る。もう一方は十センチほど敷くたび、槌で音が高くなるまで突き固め、次の層を重ねた。薄層転圧だった。

見た目は同じ高さの土壁だ。

将校は攻城槌を持ってこさせた。

従来壁は三撃で表面が割れ、五撃目に中の湿った土が噴き出して崩れた。

ザハルの壁は十撃、二十撃と低く鳴るだけ。三十撃目でようやく表面に細い傷がついた。切り取った断面は、底まで同じ硬さで、靴の踵も入らない。

その夜に大雨が降った。翌朝、従来壁は半分流れ、層ごと締めた壁の前には、削れた土が茶碗一杯しかなかった。

工期は増えなかった。薄く広げる班と固める班を分けると、一日に築ける長さは従来の一・四倍になった。やり直しがないからだ。

司令官は崩落報告を丸め、ザハルの試験壁へ立てた。

「国境まで土塁は七千歩。すべてこの十センチで築く」

将校は「時間をかけて叩けば強くなるのは当然」と言った。ザハルは作業記録を見せた。従来壁は崩れるたび同じ土を三度盛り直し、百人が九日を失っていた。薄い層なら一度で済み、槌を振る人数を増やしても工程は滞らない。

兵士たちは十センチの目印を付けた棒を使い、誰が作業しても厚さを揃えた。午後だけで試験区間五十歩が完成し、夕立のあとも足跡一つ沈まない。荷車を上へ走らせると、車輪は表面を削らず乾いた音を返した。崩落の責任をザハルへ押しつけた将校の区間だけが泥になり、補修費の差は金貨千枚を超えた。

兵士たちは崩れない壁の上に旗を立て、雨上がりの風の中で歓声を上げた。

嘲っていた将校から指揮杖を取り上げ、ザハルへ渡した。

「本日付で築城隊長に任命する。必要な人員を好きに選べ」