四角い紙に書いた日

火曜の午後七時四十分、真昼はスーパーのレジを出たところで、鞠子からの電話を取った。

買い物袋には、半額の鮭弁当、牛乳、トイレットペーパー。長いレシートの下端には、ポイント残高が印字されていた。

「いま話せる?」

鞠子の声は弾んでいた。真昼が店の隅へ移動すると、結婚することになった、と一息で言った。

「式、十二月の十四日。まだ先だけど、空けておいてほしくて」

真昼は「もちろん」と答えた。祝福の言葉もすぐに出た。だが通話を切ると、十二月という遠い月が急に重く感じられた。

仕事の繁忙期。去年は休日出勤が続き、忘年会も断った。手帳にはまだ年末の予定を書いていない。予定がないのではなく、先のことを考える余裕がなくて、白いままにしていた。

真昼はベンチに座り、バッグからペンを探した。手帳は家だ。忘れないように、レシートの裏へ〈12/14 鞠子〉と書く。

その文字の隣に、今日買った金額が透けて見えた。二千百六十七円。結婚式へ行くなら、交通費も服も祝儀も必要になる。先の出費まで一度に押し寄せ、真昼はレシートを折りたくなった。

鞠子から写真が届いた。指輪ではなく、二人で食べたらしい定食の写真だった。向かいの席に、半分だけ腕が写っている。

〈ちゃんとした写真、まだなくて〉

真昼は少し笑った。結婚報告の背景にも、味噌汁と漬物がある。

家に着き、鮭弁当を温める。手帳を開くと、十二月の頁はまっさらだった。真昼は十四日に丸をつけた。そのあと、十一月最後の日曜にも同じ太さの丸をつけ、〈何もしない〉と書いた。

鞠子のために一日を空けるなら、自分のための一日も先に確保していい。繁忙期に本当に休めるかは分からない。それでも、書かなければ最初から存在しない。

レシートは捨てず、十二月の頁に挟んだ。四角い紙の片面には生活費、裏面には友人の結婚式。どちらも今の真昼の暮らしだった。

鮭弁当のふたに水滴がついた。真昼は皿へ移さず、そのまま箸を入れた。十二月の心配は十二月の自分にも分けることにして、今夜は温かいうちに食べた。