夕焼け竜の翼布

収穫祭の空から、夕焼け色の幼竜が落ちてきた。

広場の天幕を破って転がり、片翼を広げたまま動けない。兵士たちは翼を折られる前に縛れと騒ぎ、見物人は火を吐くぞと逃げた。

旅の仕立屋セオは、破れた天幕より幼竜の翼を見た。

彼の縫い目は細かすぎて時間がかかると、町の商人には仕事を断られたばかりだった。だが布がどちらへ引かれ、どこから裂けるかを読む目は鈍っていない。

薄い翼膜に、祭り飾りの金属糸が絡んでいる。飛ぼうとするたび糸が鋸のように食い込み、裂け目を広げていた。幼竜が尾で地面を打つのは、怒りではなく痛みだ。

「縛ったら、もっと裂けます」

「仕立屋が竜を治せるものか」

兵士の嘲りを聞き流し、セオは裁ち鋏を出した。まず翼の外側に絡んだ飾り紐を切る。幼竜が振り向いて牙を見せたが、彼は裂け目に触れず、一本ずつ金属糸だけを除いた。

最後に残った傷は、掌ほどだった。

縫えば穴が増える。セオは荷物から、日光を含むと温かくなる「夕絹」を取り出した。高価すぎて注文主に買い叩かれ、売れ残っていた布だ。翼を閉じた時につれない向きへ薄く切り、薬糊を塗り、翼の両側からそっと当てる。指先で縁だけを押さえ、体温が布へ移るのを待った。

布は夕焼けと同じ色に溶け、裂け目を塞いだ。

幼竜がおそるおそる翼を動かす。痛みはない。次の瞬間、広場を一周するほどの風が起こり、切れた飾り布が空へ舞った。

誰もが歓声を上げる中、幼竜は飛び去らなかった。

セオの前へ戻り、片翼を大きく広げる。そして彼の肩から膝までを、布団のように包んだ。胸元には、縫い目に似た契約印が浮かぶ。

夕絹を買わなかった商人が、青ざめて布の名を尋ねている。

セオは答えず、翼の下で笑った。膜は絹より滑らかで、日暮れの石壁ほどのぬくもりを含み、肩へかかる重さは「役に立たない布」ではなく彼自身が選ばれた証として、静かに体を包んでいた。