家族専用ゲート七番
惑星クルルの宇宙港で、地球人四人は案内板を見上げた。
〈FAMILY-7 専用ゲート〉
添乗員の煤竹リネンが言う。
「家族専用らしい。私たち、家族のふりをしましょう」
学者、整備士、料理人は顔を見合わせた。
「誰が父?」
「最年長の教授」
「私は三十二歳だ」
「宇宙では十分、父です」
「母は?」
「料理人」
「性別を職業で決めないで」
四人は父、母、長男、祖母という無理のある配役で列へ並んだ。
異星人の係官が尋ねる。
「家族構成を」
教授が答える。
「私が父、こちらが妻です」
料理人が笑顔を作る。
「結婚して十二年」
整備士が小声で言う。
「私、長男なら十一歳以下では」
リネンが祖母役で割り込む。
「再婚家庭です」
「祖母が一番若いですね」と係官。
「長寿種族の血を引いて」
「地球人ですよね」
「家庭には秘密があります」
係官はさらに質問した。
「食事は一緒に?」
料理人が答える。
「毎日」
教授が言う。
「私は栄養食しか」
「好き嫌いの多い夫です」
「寝室は?」
「父と母は別」
「仲が悪い?」
「睡眠環境を尊重しています」
整備士が感心する。
「設定が現代的」
係官はリネンを見る。
「祖母のお名前は」
「煤竹リネン」
「父と姓が違う」
「夫婦別姓です」
「祖母ですよ」
「三世代別姓です」
「地球の家族制度は複雑ですね」
四人は冷や汗を流しながら、家族写真まで要求されるのではと身構えた。
係官が最後に尋ねる。
「ところで、なぜ皆さん家族の説明を?」
リネンが案内板を指す。
「このゲートは家族専用でしょう」
係官は触手で文字の下を示した。
〈FAMILY-7〉は、四人が乗る旅客船の機種名だった。専用ゲートとは、その便の搭乗口という意味だ。
「家族である必要はありません」
教授が眼鏡を外した。
「では今の質問は?」
「皆さんが始めたので、興味深く聞きました」
料理人は偽の夫へ言った。
「十二年間、お疲れさま」
整備士も頭を下げる。
「父さん、短い間でした」
リネンは杖のふりをしていた傘を畳んだ。
家族は搭乗前に、円満解散した。