抱けない鎧

牢獄の廊下は、人が二人並べないほど狭かった。

先頭に立つトゥリカは、銀色の身体を壁いっぱいに広げた。彼女の肉は水銀のように形を変え、刃も矢も受け止める。囚人たちを裏門まで運べるのは彼女だけだった。

ただし一度受けた武器の形は、二度と身体から消えない。

最初の兵が剣を振った。

トゥリカの左腕が薄い盾になって受ける。剣は折れたが、腕はそのまま幅広い刃へ固まった。もう指には戻らない。

「進め!」

囚人のロッソが後ろへ叫ぶ。

二人目の槍を胸で包むと、背中から長い穂先が生えた。三人目の鎖は肋骨になり、胴を締め上げた。四人目の鉤爪を呑んだ右手は、鉄の熊手へ変わった。

トゥリカは人間だった頃、ロッソと市場で踊ったことがある。両手を組み、指の間へ温かな汗を感じた。その記憶があるから、指を失うことが怖かった。

今はもう、恐れるための掌がない。

裏門の前に、鎧兵が列を作っていた。中央には小型の破城砲。狭い廊下で撃てば兵も巻き込むが、看守長はためらわず火縄を下ろした。

「避けろ!」

ロッソがトゥリカを引こうとした。

彼女は逆に彼を囚人たちの中へ押し込み、身体を扉ほど大きく広げた。

砲弾が胸へ入る。

銀の肉が波打ち、熱と衝撃を包み込む。背後の誰にも傷は届かなかった。

しかし胸の中央が丸い砲身へ固まり、腹から車輪のような鉄骨が生えた。トゥリカは膝を曲げられなくなり、その場へ倒れ込む。

囚人たちは彼女の身体を橋にして兵を越え、裏門を開いた。外から夜風が流れ込む。

ロッソだけが戻ってきた。

「一緒に行こう」

彼は銀の肩を抱こうとしたが、刃になった腕と槍の背が彼を近づけない。

トゥリカは口を作ろうとした。だが最後に受けた砲の形が喉まで支配し、声は砲身の奥で反響する金属音になった。

ロッソはそれでも両腕を伸ばし、刃の隙間から額を触れた。

彼女も抱き返そうとした。

右腕の鉤爪が床を掻き、左腕の刃が壁へ深く刺さった。

夜明け、牢獄の裏門には武器を寄せ集めた巨大な鎧が残った。胸の砲口だけが外を向き、その奥で、人の腕の形をした銀が届かない抱擁を繰り返していた。