敵国価格は王都ひとつ

「敵がいくら払うかしか見えない鑑定士など、戦場では無能だ」

補給隊長ドレスクはユファンを荷車隊から追放した。

【敵価鑑定:近くにいる敵対者が、対象へ支払ってもよい最大の代価を表示する】

敵がいなければ何も出ない。いても、相手の懐具合や気分に左右される。武器の性能も毒の有無も分からず、商人遊びと笑われた。

その日、包囲された王都へ千台の救援荷車が到着した。城内のパンは翌朝で尽きる。門前では飢えた市民が荷車を見て歓声を上げ、兵士も早く通せと叫んでいた。

女元帥ハーディアは門を開けるか迷っていた。積荷は穀物、毛布、薪。樽の底まで改め、荷車の車軸も外し、すべて神官の検査を通った。魔力反応もない。だが敵軍は不自然なほど静かだった。見張り塔からは、敵兵が武器を置いて何かを待つ姿が見えた。

追放門の外にいたユファンは、一番近い小麦袋を鑑定した。

――敵対者評価額:銅貨三枚。

次も二枚。毛布は零。壊れた鍋は一枚。

「この場に敵がいるのか?」

元帥の問いに、ユファンはうなずいた。能力が動く以上、荷車隊のどこかに敵意ある者が潜んでいる。

彼は列に沿って歩いた。値はどれも安い。最後尾の荷車には、掃除用の古い箒が一本だけ立てかけられていた。

触れた瞬間、桁が視界を埋めた。

――敵対者評価額:王都一つ分。

兵士が笑うより先に、荷車の御者が逃げた。ハーディアの投槍が、その外套を地面へ縫い留める。

ユファンは箒の柄を折った。

中から針ほどの黒い杭が落ちる。魔力を持たぬよう偽装された《門喰いの座標杭》。城内へ一本運び込まれれば、敵軍は結界を越えてその地点へ転移できる。

杭が砕けると、遠い丘の敵陣で巨大な転移門が暴発した。集結していた魔獣たちが互いに飲み込まれ、黒い光の中へ消えていく。

捕らえた御者は敵国の間者だった。元帥は補給隊長の追放命令を受け取り、箒の柄と一緒にへし折った。

「王都の値段を知る者は多い。敵が何に王都を賭けたかを見抜いた者は、そなた一人だ」

ハーディアは城門の検査印をユファンへ渡した。

「今後、この門を通る物の価値は、敵に尋ねてもらおう」