昨日の為替で買った晩餐

外交晩餐会の終盤、エドモン侯爵令息は金縁の伝票を掲げた。

「隣国使節団の歓迎費から五千金貨を、アマリリスが横領した。この両替伝票が証拠だ。国家の信用を損ねた女との婚約を破棄する」

伝票には昨日の日付と、アマリリスの署名がある。国内金貨を隣国銀貨へ替えた後、差額が消えていた。

彼女は半年かけて隣国語と商慣行を学び、歓迎費を前年の三分の二に抑えた。その功績は一行で済まされたが、「外国かぶれで金勘定に執着する」という悪評だけは広く残った。エドモンは、その印象に偽造紙一枚を重ねたのだ。

彼女は一読し、顔を上げた。署名を真似られたことより、隣国との信頼を自分の失脚に使われたことが腹立たしかった。それでも、怒りは数字の後に置いた。

「この伝票は昨日発行されたものだと?」

「日付も読めないのか」

「読めるから伺いました」

隣国王子ザフィールが席を立ち、伝票を受け取った。彼は表の金額には触れず、右下の為替率を指した。

一対七・四。

その数字は、隣国中央銀行が今朝初めて発表した新しい公定率だった。昨日の両替商が知ることはできない。

伝票という一枚の証拠が、同時に偽造の証拠へ変わった。

「書記が日付を誤っただけだ」とエドモンは言った。

「では、その誤った伝票で私を犯罪者と断じたのですね」

アマリリスの声は穏やかだった。ザフィールもそれ以上は語らない。数字一つで十分だった。

追い詰められたエドモンは、今度は微笑もうとした。

「外交上の混乱を避けるため、婚約破棄は撤回しよう。君が黙れば丸く収まる」

「昨日の嘘を、明日の私に支払わせないでください」

アマリリスは婚約指輪を外し、金縁の伝票の上へ置いた。

「差額は、これで清算いたします」

彼女が背を向けると、ザフィールは国境へ戻る扉の前で手を差し出していた。隣国の通貨改革に助言者として来るかどうか、その答えを急かさない手だった。

アマリリスは偽の日付を置き去りにし、今日を選ぶように、その手を取った。