残り三つを止める

理世の土曜には、四つの目覚ましが鳴る。

六時半、六時四十分、七時、七時十五分。

元恋人は、休日に眠る理世を「時間を捨てている」と言った。

「寝てばかりだから何も積み上がらないんだよ。成功する人は休みの日も動く」

同棲していた頃、彼より遅く起きると一日中だらしない気分になった。別れて一人暮らしへ戻っても、目覚ましだけは増えた。起きれば洗濯、勉強、作り置き。予定を埋めるほど、まともな人間に近づける気がした。

雨の土曜、六時半の音で理世は目を開けた。前夜までの残業で、まぶたが砂袋のように重い。

最初のアラームを止める。あと十分で次が鳴る。それまでに起きなければ、と布団を剥ごうとした。

スマホの画面には、残り三つの時刻が並んでいた。

理世は一つずつ、スイッチを切った。

六時四十分。七時。七時十五分。

最後を止めると、部屋が雨音だけになった。

寝直すことへの罪悪感で、かえって目が冴えた。洗濯物は溜まっている。資格試験の教材も開いていない。元恋人の声が、今日は何も残らないぞ、と言った。

理世は返事をせず、布団を肩まで引き上げた。

布団の中で、理世は何度も時計を確認した。眠れなければ起きた方が有意義だと思い、片足だけ床へ出したこともある。雨が窓を細かく叩き、体の重さは変わらなかった。理世は足を戻し、目を閉じた。休むことを上手にできなくても、起床だけは選び直さなかった。

次に目を覚ましたのは九時十二分だった。劇的に元気になったわけではない。首は少し痛く、雨も続いていた。

台所へ行くと、洗っていないマグカップが二つある。理世は一つだけ洗い、紅茶を淹れた。洗濯機は回さなかった。

紅茶が冷めるまで、教材の表紙にも触れなかった。

ソファに座り、湯気を見た。

午前を取り戻そうと予定表を詰め直すこともしなかった。空白の三時間は、成果に変換されないまま過ぎている。

理世はスマホを伏せた。翌週も同じことができるかは分からない。ただその土曜だけ、残り三つの目覚ましは鳴らなかった。