爆発跡に四つの寝袋

錬金術師ハフェルの新型照明薬は、光る代わりにギルドの研究室を吹き飛ばした。

幸い死者は出なかったが、窓は全滅し、天井には人が通れそうな穴が開いた。受付長は修繕費の請求書を机へ置き、今後の施設利用を禁じた。

照明薬は、暗闇で魔物に襲われたイリヤナのために作っていた。ボルツは『太陽みたいなのを頼む』と笑い、シェランは魔石を半分出してくれた。だから爆発で三人の好意まで煤にした気がした。

受付長が席を外すと、見物人は『また錬金術師か』と囁いた。ハフェルは反論せず、床に散った設計紙から三人の名が書かれた共同開発欄だけを破り取ろうとした。

弓士イリヤナは破片を集め、拳闘士ボルツは工房街へ走り、魔剣士シェランは無言で煤だらけの荷物を外へ運び出した。

ハフェルは請求書の額を見て、自分の冒険者証を裏返した。

前の工房でも爆発を起こした時、仲間は「才能は認める」と言いながら翌日に鍵を替えた。今回は才能すら疑わしい。

彼は残った薬瓶を箱に詰め、三人の荷物から自分の道具だけを分ける。

「弁償は僕がします。皆さんは別の錬金術師を」

イリヤナが集めたガラス片の中から、無傷の小瓶を一本選び、矢筒の内側へ差した。

「次の試作品はここに入る大きさで」

工房街から戻ったボルツは、借りてきた大槌を床へ置く。

「安い倉庫を見つけた。壁が厚い。直す前に壊れても怒られない」

シェランは外へ運んだ寝袋を四つ、爆発跡の床へ等間隔で並べた。自分の寝袋だけ出口へ寄せず、ハフェルのものを中央に置く。

「今夜は見張りが必要だ。雨が穴から入る」

ハフェルは請求書を握る。

「次は怪我人が出るかもしれない」

「だから試験手順を増やす」とイリヤナ。

「壁も増やす」とボルツ。

シェランは煤けた魔剣をハフェルへ預け、両手で屋根用の布を引き上げた。

「一人では張れない。持て」

穴を塞ぐ布には、四人の隊章が重しとして縫いつけられた。

四人で穴を塞ぐと、壊れた研究室に小さな暗がりが戻った。灯りは一つも成功していない。

それでも床には四つの寝袋があり、夜を越す場所だけは爆発で失われなかった。