王子を敵にした朝会議

参謀トルミナを王宮から追放した翌朝、王太子ダロニエは初めて一人で政務会議を開いた。

議題は三つ。干ばつ農村への救済、商会への臨時税、王子の新宮殿だった。

王太子は最も重要だとして、臨時税から話し始めた。

商会代表は顔色を変えた。次に新宮殿の予算が示されると、全員が席を立った。最後に農村救済を説明しようとしても、会議室には書記しか残っていなかった。

その日の午後、商会は荷馬車を止めた。税収どころか、王都へ届く小麦まで途絶えた。

「農民を救う税だと言えば納得したはずだ!」

王太子は怒鳴った。

トルミナなら、最初に干上がった井戸の報告を見せ、次に商会が救援輸送へ参加すれば税を減らす案を出し、宮殿予算は最後に延期すると告げていた。議題は同じでも、相手が自分の役割を理解してから負担を示す。

彼女の会議順序表を、王太子は「見栄えを整える雑務」と呼んで破った。

小麦商が門を閉ざすと、昼にはパンの値が二倍になった。王太子は税を撤回すると告げたが、代表たちは「次は何を先に決めるか分からない」と交渉そのものを拒んだ。会議の失敗は一つの法案ではなく、王宮の説明順を誰も信用しなくなったことだった。

書記がトルミナの旧議事録を調べると、彼女は反対派へ先に発言させていた。味方の数を増やすためではない。不満を先に卓上へ出し、後の提案へ隠れた刃を残さないためだった。

同じ頃、トルミナは自由都市の市庁舎で、火災復旧会議を進めていた。

最初に焼け残った倉庫の一覧、次に必要な材木、最後に負担額。大工組合は人手を、商人は倉庫を、住民は一日ずつ労働を出すと自ら申し出た。

市長ハーヴィナは、全員の署名が揃った議事録を掲げた。

「命令していないのに、皆が自分の仕事を選んだ。これが参謀の会議なのね」

トルミナには都市政務参謀の席が用意された。

夕方、王宮の騎士が追いついた。商会を会議へ戻せば、王太子付き主席参謀にするという勅書を差し出す。

自由都市は王都の市民向けに余剰小麦を放出すると決めた。トルミナは値上げを防ぐ販売順まで整えたが、王太子の会議へ戻る席だけは用意しなかった。

トルミナは新しい席札を机へ置いたまま答えた。

「王宮との政務契約は、昨日の追放詔書で終了しています」