甘い実の討伐印

栽培師ニマは、討伐隊の荷車へ熟れすぎた月蜜瓜を積んだ。

「遠足ではないぞ」

魔砲士ゼドが鼻をつまむ。果汁の匂いは強く、皮は触れるだけで裂けた。戦果盤の仮評価は1%。ニマは畑仕事しかできず、討伐対象の地潜り蟲へ傷ひとつ付けられない。

砂丘へ着くと、巨大な蟲は地中から口だけを出した。硬い外殻に魔砲を撃っても、砂へ潜られてしまう。核は腹の奥にあり、外から狙えなかった。

ニマは割れた月蜜瓜を砂へ置いた。

「餌付けか!」

ゼドが怒鳴る間に、蟲は甘い匂いへ引かれて瓜を丸呑みにした。砲撃が再開されても、外殻には浅い傷しか付かない。

だが日が陰ると、蟲の腹が淡く光った。

月蜜瓜の種は、土の中では月光を蓄え、芽を出す場所を照らす。蟲の胃で砕かれた果肉だけが消化され、硬い種は核の周囲へ集まっていた。

「光っている中心を狙ってください」

ニマは砂に耳をつけ、腹の光が近づく方向へ指を向ける。魔砲士たちは半信半疑で砂ごと撃った。

光が揺れ、蟲が地上へ跳ね上がる。核の位置は身体が曲がっても透けて見えた。矢も槍も魔法も、もう外殻を探る必要がない。光へ集中した攻撃が、内側の核を砕いた。

ゼドは帰還すると「魔砲の熱で核を発光させた」と説明した。腐りかけの瓜は補給品としても認められず、ニマの名は討伐名簿の端に置かれた。

戦果盤が蟲の腹から回収された種を読み取る。種に残った月光と、すべての命中点が重なった。魔砲が外れ続けた時間まで、砂上に明瞭に映し出される。

ニマは最後の瓜を受付台へ置いた。皮が裂け、種が青白く輝く。

ゼドが目を逸らした先で、首位の表示が甘い果汁の上へ落ちた。

砲手たちは砲身を磨くより先に、残った種を丁寧に拾い集めた。何を撃つか見えなければ威力に意味はない。ゼドの魔砲台から照準旗が外され、ニマの籠へ結ばれると、青白い種が返事のように光った。

畑仕事と呼ばれた手が、最も正確な照準を作ったのだった。

【再算定完了】

【ニマ・討伐寄与率:1% → 96%】

【隊内順位:最下位 → 首位】

【役職更新:栽培師 → 生体標識官】