白いリングピロー

結婚式の前日、二人は指輪の交換を何度も練習した。

花嫁は手順を間違える新郎へ苛立ち、

「一日くらい、ちゃんとして」

と言った。

新郎も、

「君は何でも決めすぎる」

と言い返した。

練習中、二人は互いの指輪を間違った手へ同時にはめた。

その瞬間、体が入れ替わった。

正しい手へ指輪を交換するまで戻れない。

翌朝、二人は仕方なく相手の姿で式へ向かった。

花嫁の体に入った新郎は、支度室で立っているだけで疲れた。

衣裳の重さ。

髪を引っぱられる痛み。

親戚から、

「きれいにしてもらって」

「仕事は続けるの?」

「子どもは早い方が」

と次々に話しかけられる。

花嫁が式の細部を決め続けたのは、何もしなければ他人に人生まで決められる気がしたからだった。

新郎の体に入った花嫁は、控室で何度も肩を叩かれた。

「男は泣くなよ」

「これから一家の大黒柱だ」

明るく返そうとすると、新郎の胸が激しく脈打った。

父親を早く亡くした新郎は、祭壇まで一人で歩くことを恐れていた。

それを話せず、練習をふざけてごまかしていた。

式の直前、二人は倉庫で会った。

「決めすぎて、ごめん」

新郎が花嫁の声で言う。

「ふざけて、ごめん」

花嫁が新郎の声で返す。

正しい手へ指輪を戻せば、今すぐ元へ戻れる。

だが二人は少し迷った。

相手の体なら、相手の恐怖を代わりに演じずに済む気がしたからだ。

「でも、代わったまま誓うのは違うね」

花嫁が言った。

二人は指輪を外し、正しい手へはめた。

元の体へ戻る。

式が始まった。

花嫁は祭壇へ進む前、新郎へ尋ねた。

「一人で歩ける?」

新郎は首を振った。

予定を変え、二人で入口から並んで歩いた。

親戚はざわついた。

新郎の目には涙があり、花嫁は笑わなかった。

どちらも隠さず、同じ速度で祭壇へ向かった。

誓いの言葉で、新郎は一度詰まった。

花嫁は先に言わず待った。

花嫁の指が震えると、新郎は人から見えない位置で手を支えた。

式後、リングピローの裏へ二人で一文を書いた。

「相手の立場になれば分かる、とは言わない。分からない日には聞く」

入れ替わりは一度きりだった。

結婚生活では何度も、相手の気持ちを読み違えた。

そのたび指輪を見て、正しい答えではなく、次の質問を選んだ。