百個多い在庫
午前零時の棚卸しで、スープの在庫が百個多かった。
食品倉庫では、足りない数字より多い数字のほうが不気味だ。余ったように見える商品は、誰かに届かなかった商品かもしれない。どこかの店へ送るはずの商品が、倉庫に残っているかもしれない。
冬木瑠璃は、翌朝の出荷を止めずに原因を調べるよう頼まれた。端末では二千四百個、実物は二千五百個。主任は「前回の数え間違いで調整しろ」と言ったが、瑠璃は差を消さなかった。
箱は一ケース二十個入り。百個なら五ケースだ。ところが棚には端数の開封箱が一つあり、そこに百個が裸で入っていた。数だけ見れば答えは簡単だった。
瑠璃はロット番号を確認した。裸の商品は、棚のケースより一か月古い。先入先出なら、とっくに出荷されているはずだ。彼女は前日のピッキング記録をたどり、同じ古いロットが五ケース出たことになっているのを見つけた。
「出荷済みの五ケースが、ここへ戻った?」
返品記録はない。瑠璃は空箱置き場へ行き、潰されたケースを広げた。五枚とも底が抜け、テープが湿っていた。前夜、運搬中に底が破れ、商品を仮の箱へ移したあと、元の五ケース分を端末上では出荷済みにしたまま棚へ戻していたのだ。仮箱にはラベルがなく、百個として別に数えられた。作業者は散らばった商品を救ったつもりで、出荷先だけを棚に置き忘れていた。
問題は在庫が多いことではない。出荷したことになっている百個が、店舗へ届いていないことだった。
瑠璃は配送記録から対象店を特定し、始業前の店へ連絡した。開店用の在庫は不足するが、近隣店向けの同ロットを一部振り替えれば間に合う。古い百個は新しいケースへ詰め、数量を二人で確認し、緊急便へ回した。
主任が調整画面を閉じた。
「数字を合わせてたら、店で初めて分かったな」
瑠璃は裸の商品があった棚へ、仮置き禁止の札をつけた。仮置きする場合は、元の出荷番号を箱に残す欄も作った。
午前三時、在庫は二千四百個に戻った。ちょうどそのとき、朝の補充指示が届き、同じスープを三百個棚へ入れろと表示された。
瑠璃は一度そろった数字を見送り、新しいケースの封を切った。