砂を拒む正直な天秤

飢饉の町へ届いた救援小麦は、袋だけが重かった。

倉庫番のシュウカが中身を握ると、指の間から白い砂が落ちる。商業組合長は「輸送中に混じった」と笑い、代金は契約どおり全額払えと言った。拒めば次の荷は来ない。受け入れれば、パンを焼く前に人が倒れる。

町長は俯いた。

「証明できなければ、こちらの言いがかりになる」

シュウカは、倉庫番就任時に渡された一回限りの確定SSRガチャ札を取り出した。

必要なのは食べ物を増やす魔法ではない。混ぜられたものを、誰の目にも誤魔化せない形で分ける道具。

札を回すと、片方の皿が白、もう片方が黒い小さな天秤が現れた。

《約束の天秤》

契約で渡すと定めた物だけを白皿へ、それ以外を黒皿へ分ける。

シュウカは小麦袋を一つ、天秤の中央へ載せた。

袋が光にほどける。白皿には小麦が山となり、黒皿には砂、小石、湿らせるための水、重さを増す鉛粒まで積み上がった。白皿は契約量の六割で止まる。袋ごとの誤差はなく、黒皿の鉛粒には商業組合の工房印までくっきり残っていた。

組合長の笑みが消えた。

「その魔道具が正しい保証はない!」

「では、契約書も載せます」

羊皮紙を置く。白皿へ町の注文書が残り、黒皿へ、紙の裏に隠されていた別の帳簿が浮かんだ。《不足四割を砂で補填》《差額は組合長口座へ》と署名まである。

見物していた荷運び人たちが、一斉に荷車を町側へ引いた。砂袋は証拠として封をされる。

「俺たちは小麦を運ぶ契約だ。砂運びの金はもらってない」

町長は代金の六割だけを白皿へ置き、残りを拒否した。組合長が怒鳴っても、護衛は剣を抜かなかった。彼らの契約もまた、「正当な商品を守る」と書かれていたからだ。

分けられた小麦はその日のうちに製粉所へ運ばれた。最初のパンが焼けると、シュウカは一番小さな一切れを味見する。砂は一粒も噛まなかった。

天秤の支柱に遅れて金の紋章が現れる。

《確定SSR〈約束の天秤〉――大型商取引における純度一〇〇%判定、世界初成功》