砂海の棗椰子

砂漠では、実りも音を立てない。

朝になると、ダリオの棗椰子園を風の精が巡る。熟した実だけを房から外し、砂で編んだ籠へ受け止め、交易所の転送門へ運ぶ。水路の掃除も、害虫除けも、古い泉に宿る精たちがしてくれる。

ダリオは日陰の敷物に寝転び、冷えた乳茶を飲んでいた。

かつて彼は大商隊の先導役だった。隊商長は「止まれば損だ」と言い、砂嵐の兆しがあっても歩かせた。白い外套の裾は砂で硬くなり、背中には荷綱が食い込んだ跡が残る。最後の旅では三日眠らず、立ったまま幻を見た。

椰子の葉が揺れ、籠が一つ転送門へ吸い込まれる。

指輪型の会計印が涼しく光った。

《棗椰子二十四籠、南交易所で売却。代金受領》

十分な金額だった。だがダリオが数えたのは金貨ではなく、これから日没までの時間だった。六時間。誰にも行程を決められない六時間。

商隊にいた頃の六時間は、次の井戸までの猶予にすぎなかった。喉が渇いても、足が痛くても、砂時計が落ちれば出発した。今、同じ長さの時間が、乳茶をもう一杯飲んでも減給されないものとして目の前に広がっている。六時間を使い切らずに眠っても、残りは罰金にならず明日へ続く。砂漠の空に、未使用の時間がこんなにあるとは知らなかった。

通信鏡に元隊商長の顔が浮かぶ。

『東路の案内人が逃げた。今から来い』

「断る」

『報酬は倍だ』

「要らない」

『三倍』

「昼寝三回分でも要らない」

隊商長の眉が跳ねた。

『商隊が迷えば、お前の評判にも傷がつくぞ』

「辞めた先導役の評判で腹は満たせない。棗なら満たせる」

『昔はもっと責任感があった』

ダリオは空になった杯を置いた。

「昔は、断ったら水を減らされた」

鏡の表面から相手の顔が消える前に、彼は通信術式へ布を掛けた。

風の精が一房だけ転送せず、敷物のそばへ置いていく。形の崩れた自家用だ。ダリオは一粒を口へ入れ、濃い甘さを味わった。

午後は何をするか。考えているうちに、砂を渡る風がちょうどよい子守歌になった。

彼は外套を枕に丸め、答えを決めないまま眠り始めた。