茶葉は半量

柊木瑞枝は、茶舗・青嵐の量り台へ、丸い銀色の茶筒を置いた。蓋には「M & M」と彫られている。結婚した年、夫と二人で注文したものだった。夫は昨冬、二十九歳で亡くなった。

茶筒が空になってから半年、瑞枝は補充できずにいた。二人で飲んでいた銘柄を一人分だけ買うのは、夫を減らして数えるようだった。かといって二人分を買えば、最後は香りが抜ける。空の筒は食器棚に置かれ、見るたびに、何も決めていない自分を映した。

今月末、二人で借りた部屋の更新期限が来る。広い部屋を残すか、駅から離れた小さな部屋へ移るか。瑞枝は新居の申込書まで用意したのに、緊急連絡先の欄で手が止まっていた。夫の名前を消すことが、住んでいた事実まで消すように思えた。更新すれば家賃は払える。ただ、使わない机と椅子のために働く暮らしを、思い出を守ることと呼んでよいのか分からなかった。

店主は茶筒を受け取り、内側に残った粉を刷毛で静かに払った。注文量を聞かず、まず空の筒を秤へ載せる。重さを紙へ書き、次にいつもの茶葉を少しずつ入れた。

瑞枝が以前買っていた量の、ちょうど半分で手が止まった。店主は不足分を足そうとせず、筒を軽く振って茶葉の高さをならした。蓋を閉める前、古い二人分のラベルを剥がした。彫られた文字には触れず、新しいラベルへ銘柄と日付、それから「五十グラム」とだけ記す。二人用とも一人用とも書かなかった。

会計も半量だった。贈答用の袋ではなく、片手で持てる紙袋へ筒を入れ、持ち手を二本まとめて一つに結んだ。店主は励ます言葉を言わず、次の客もいない店内で、空になった秤の針を零へ戻した。

瑞枝はその針が真ん中で止まるのを見届けた。半分は不足ではなく、今飲める量なのだと思った。

店先のベンチで、新居の申込書を開く。緊急連絡先には姉の名前を入力した。現在の同居人欄に残していた夫の名を削除し、保存する。

紙袋は軽かった。けれど茶筒の中では、一人で飲み切れる茶葉が、確かに音を立てていた。