荷馬車を集める一点

「地図上で、皆から近い一点を示すだけ? 道を作れぬ地図師は無能だ」

王都物流院の試験で、タルカは測量棒を没収された。

【固有技能:《中継点》――地図上に複数の目的地を記すと、総移動時間が最小になる一点が浮かぶ】

そこへ道があるとは限らず、荷馬車を速くする力もない。商王ベネクは「線の上の算数」と切り捨てた。

その夏、王都で野菜が腐り、地方では塩と鉄が不足した。商人は各村から王都へ個別に荷車を走らせ、帰りは空荷。細い道へ車列が集中し、橋で三日待ちになる。採れた果物は都へ着く前に潰れ、運賃だけが値段を押し上げていた。王都市場では萎れた青菜が銀貨で売られ、産地では同じ青菜が家畜の餌になっている。荷車は互いの村を知らず、帰路に必要な品があっても空のまま横を通り過ぎた。速い馬を増やすより、重複する遠回りを消すほうが先だった。

タルカは二十の村と王都を地図へ記した。《中継点》が示したのは、大街道ではなく古い石切場だった。四方の農道が集まり、井戸と広い平地がある。

彼は石切場を共同集荷所へ変えた。村の小車は朝採れをそこまで運び、王都行きの大型車へ積み替える。王都から来た車は塩、鉄、布を置き、帰りに野菜を満載する。荷物を行先別に箱の色で分け、車を待たずに積み替える。前世で知った中継倉庫と共同配送だった。

最初の週、荷車の総走行距離は半分になった。二日かかっていた葉野菜が、その日の夕方に王都市場へ並ぶ。空荷は消え、運賃が下がり、村の売値は上がった。

旧来の運送組合は石切場を封鎖しようとした。だが集まった農民と王都商人の双方が、自分たちの荷札を掲げた。敵に回したのは一村ではなく、全ての経路だった。

ベネクは石切場の中央に立ち、絶えず入れ替わる荷車を見た。

「おまえの技能は一点しか示さぬ」

「だから皆が、同じ場所へ集まれます」

商王は物流院の大印をタルカへ渡した。

「道を作れぬ無能ではない。おまえは、ばらばらの道を一つの商売にした」