表彰盾の裏側

鵜飼彩都は、母の遺品箱から六枚の表彰盾を取り出した。

水泳、作文、英語スピーチ。どれも彩都が子どものころ受け取ったものだ。表には彩都の名前、裏には母の字で順位と日付、その日の失点まで書かれている。

母は盾を磨く日を月末と決め、彩都にも横で見ているよう言った。埃が残れば「努力を粗末にしている」と叱られた。賞を取れなかった大会の記録だけは、盾のない隙間に紙で貼られていた。

彩都が大学を辞めた年、母は六枚を一列に並べ、「本当のあなたはできる子」と言った。その言葉は励ましではなく、今の彩都を偽物にするための額縁だった。

彩都はその年の埃だけが濃く残った盾を最初に解体した。ねじは固かったが、父へ頼まなかった。手が痛くても、自分の名前を台座から外す作業は自分で終えたかった。

父は、居間の棚へ並べ直すよう言った。

「お母さんが、お前のために磨いていたんだぞ」

彩都は一枚を裏返した。〈二位。最後の呼吸が遅い〉。褒められた記憶より、帰りの車で次の目標を決められた記憶が戻る。

今日は粗大ごみではなく、金属と木材に分けて回収へ出す日だった。彩都はドライバーを握った。

「せめて一枚は残せ」

「私が取った賞なのに、残す枚数まで決めるの?」

父は口を閉じた。母が亡くなってから、父は母の言葉を代読するようになった。「お母さんなら」と言えば、彩都が従うと思っている。

彩都は六枚とも解体した。名前の刻まれた金属板が、床へ軽い音を立てて落ちる。

父が「そこまで嫌わなくても」と言った。

「嫌いだからじゃない。もう成績を家族の祭壇に置かないだけ」

金属板は資源回収の袋へ、木の台は別の箱へ入れた。父が一枚の裏書きを指でなぞり、「こんなことまで書いていたのか」と呟いた。

彩都は説明しなかった。父が今さら母を責めることも、代わりに謝ることも求めなかった。

回収袋の口を結ぶと、盾は互いにぶつかって乾いた音を立てた。

棚には四角い埃の跡が六つ残った。彩都は雑巾で一つずつ拭き、何も飾らないまま父へ返した。