触れた順番
風祭リオンは脱出鎖を握ったまま、牢獄長バザルへ手首を掴ませた。
《順送鎖》
起動時、鎖へ触れた順に転送します。
転送先は、起動者が最後に指定した門。
一度触れた順番は手を離しても保持されます。
「鎖を渡せ。俺が最初に逃げる」
バザルはそう言ってリオンの手を押さえた。自分が最初に触れたことに気づいていない。鎖はリオンが床から拾う前、看守が運んでおり、バザルは奪う際に真っ先に触れていた。
登録順一覧は所有者にしか見えない。
《1:バザル》
《2:リオン》
《3以降:囚人四十一名》
バザルは安全都市の門を指定しろと命じる。リオンは転送先選択を開き、《監査法廷》へ合わせた。
「何を選んだ」
「一番安全な場所」
嘘ではない。囚人にとっては。
バザルは鎖を引き、起動する。
最初に彼の身体が消える。続いてリオン、囚人たち。
監査法廷の中央へ、牢獄長が一人目として現れた。まだ誰も来ていないと思い、彼は転送装置を壊そうと剣を抜く。
その行動を法廷の記録石が保存する。
二人目にリオン、三人目以降に傷だらけの囚人が到着する。最後には牢獄から運び込まれた拷問器具まで、鎖へ触れた順に並んだ。
バザルは逃げようとするが、最初の転送者には《代表証言者》の拘束が付与される。
「俺を罠にはめたな!」
「最初に行きたいって言っただろ」
《順送鎖の転送を完了》
《第一転送者バザルを代表証言者として登録》
法廷で、バザルは鎖の順番が不正に操作されたと訴えた。記録石には、彼が一番に奪い、一番に触れ、「俺が最初に逃げる」と発言した音声まで残っている。
囚人たちは最後尾だったため、全員の到着を見てから証言できた。
順番そのものに善悪はない。先頭へ立つことが指導者を意味する場合もある。だがバザルが望んだ先頭は、危険から最初に逃げる位置だった。
鎖は以後、避難訓練で最も歩けない者から触れる規則に変更された。
《脱出成功――鎖を奪って先頭へ立った者は、自由への一番乗りではなく裁判への最初の到着者になりました》