農民は大地竜の背を耕す

農民ボガートは、王都防衛軍で鍬を取り上げられた。

「畑仕事で戦争ができるか」

将軍は代わりに錆びた槍を渡したが、ボガートは一度も突き方を教わっていない。食料を育てた功績は農民の義務、剣を振る功績だけが英雄のものだった。

彼の技能も、豊作の年には誰も思い出さない。

【職業技能《一面耕起》:足元から連続する地面一面を、手にした農具で耕す。】

敵国が呼び出した大地竜は、山より大きかった。

背中には城塞が建ち、岩の鱗の間から兵士が矢を放つ。竜が一歩進むたび村が地割れへ沈み、王都の城壁さえ膝ほどの高さにしか見えない。

魔術師の雷は地面へ逃げ、騎士の剣は鱗で折れた。

将軍は農村を囮にして時間を稼げと命じた。ボガートの畑も、その進路上にある。

彼は錆びた槍を捨て、取り上げられた鍬を拾った。

大地竜が王都へ頭を下げた瞬間、ボガートは角から背へよじ登る。敵兵は土のついた服を見て笑い、矢を向けた。

「そこは畑ではないぞ、百姓!」

「俺の足が乗っている。空でも海でもない。なら地面だ」

大地竜の背は、頭から尾まで一続きの地面だった。

ボガートは鍬を一度、岩の鱗へ打ち込んだ。

最初の一筋が城塞の下を走る。次の瞬間、山ほどの背中全体に等間隔の畝が刻まれた。硬い鱗は柔らかな黒土へ返り、敵の塔も魔導砲も根元から横倒しになる。

大地竜は悲鳴を上げたが、体を覆う術式まで土と一緒に耕され、巨大な姿を保てない。尾から順に崩れ、最後には王都前へ広大な農地だけが残った。

土は千年分の魔力を含み、握れば温かい。

将軍が勝利宣言を始める横で、ボガートは畝の深さを確かめた。

「来年は、王都じゅうが食える」

城下の農民たちは、勝利の宴より先に種袋を持って集まった。将軍が戦場保存を命じても、ボガートは畝へ最初の麦を播く。敵の城塞があった場所へ緑の列が伸び、兵士たちは剣を鍬へ持ち替えた。誰が国を守ったかは、来年の食卓が証明する。

【職業《農民》が上位職《大地開墾王》へ書き換わりました。】