金毛猿は王冠を返したい

王宮の金毛猿ミダは、先王の代から宝物庫を守っていた。

賢く穏やかだったはずが、近頃は王冠を奪って高梁へ逃げ、近づく者へ金貨を投げつける。新王の戴冠式を妨げる凶獣として、弓兵が呼ばれた。

毒見役のメルカは、騒ぎの中で床に落ちた一粒の赤い雫を見つけた。見上げれば、ミダは右手だけを胸へ抱き、王冠を左手で支えている。

「盗みたいなら、両手で持つはず」

王冠の内側には、先月追加された大粒の紅玉がある。その留め爪が一つ折れて鋭く尖っていた。

メルカは王へ弓を止めるよう頼んだが、「ならばお前が取り戻せ」と言われる。彼女は宝物庫から金貨ではなく、熟した桃と清潔な布を持って高梁の下へ座った。

「王冠はいりません。手だけ見せてください」

ミダは歯をむき、金貨を一枚投げた。メルカは拾わず、桃を自分で一口食べて毒がないことを示す。次の一切れを梁の端へ置いた。

金毛猿は迷った末に降りてきた。桃を取ろうとした右手が震える。掌には紅玉の留め爪が刺さり、毛の中まで血が固まっていた。

「痛くて、王冠を外してほしかったのね」

メルカが毛抜きを差し出すと、ミダは王冠を彼女の膝へ置き、傷ついた手を重ねた。留め爪を抜き、果実酒で洗い、布を巻く。

王冠を調べれば、宝石商が粗悪な金具へすり替えていたことも判明した。責められるべきは猿ではない。

戴冠式の日、ミダは自ら王冠を新王へ渡した。しかし式が終わると王の肩には乗らず、メルカのもとへ駆け戻る。金の尾が彼女の腰へ巻きつき、契約紋が手の甲に灯った。

宝石商の倉からは、すり替えた金具と横流しの帳簿が見つかった。ミダが投げていた金貨は、すべて不正な品へ印を付けるためだったという。メルカがそれを読み解くと、猿は最初に投げた一枚を拾い、いつも空腹だった小姓のポケットへそっと戻した。

膝へ丸くなったミダの毛は、磨いた金属よりずっと柔らかかった。小柄な身体には果実籠ほどの温もりと、選ばれた者だけが知る確かな重さがあった。