鐘楼から落ちた正午

正午の法要で参列者が山門をくぐった瞬間、住職の住蓮寺玄澄が、大勢の目の前で突然、その高い鐘楼から落ちた。白い花びらが舞う石畳へ倒れた体には後頭部の傷があり、転落前に殴られていた。塔の上には誰もいない。にもかかわらず、遺体は十二時ちょうどに空から現れた。

疑われたのは副住職の雪代真慧、宮大工の矢籠喜一、寄進者代理の烏丸瀬里。三人は十一時四十分から行列の先頭に並び、数百人の参列者と中継映像に見守られていた。鐘楼へ続く石段は行列の正面にあり、途中で抜ければ必ず見える。鐘も行列も予定どおりで、塔の周囲には空白の瞬間がない。正午に遺体を落とせる者はいなかった。

玄澄は朝、雪代には後継を譲らないと告げ、矢籠には修繕費の水増しを問い、烏丸には寄進契約を破棄すると伝えた。三人とも午前中に鐘楼へ入ったが、矢籠と烏丸は十時までに境内へ下り、雪代だけが十時半まで玄澄と塔に残っていた。

塔で見つかった手掛かりは三つだけだった。第一に、上階の梁から垂れた麻縄の切断面は刃物ではなく、黒く焦げていた。第二に、窓台には白い蝋の小さな溜まりと、燃え尽きた芯が残っていた。第三に、上階の床板には乾いた血痕があり、落下した遺体の傷より古く固まっていた。

玄澄は殴られた後、窓の外側へ縄で支えられていたのだろう。行列から見えない鐘楼の裏面なら、体は正午まで発見されない。縄が切れた時、初めて表の石畳へ落ちた。

「正午に人が遺体を落としたのではありません」私は焦げた縄を示した。「雪代さんは十時半に玄澄さんを殺し、体を縄で吊り、窓台の蝋燭へ縄を触れさせた。火がゆっくり縄を焼き、法要の正午ごろ切れたのです。焦げた切り口、蝋、塔内で先に乾いた血が同じ時間差を語る。矢籠さんと烏丸さんは真の犯行時刻には塔を離れていた。最後まで残り、法要用の蝋燭を扱えたあなたにだけ、その一時間半があります。正午に落ちたのは遺体であって、犯行時刻ではありません」