雨雲の下の選挙ポスター

生徒会選挙のポスターを貼り終えた直後、空が割れた。

昇降口前の掲示板まで走ったが、横殴りの雨が紙の端をめくり上げている。私の笑顔も、対立候補の彼の標語も、みるみる水を吸ってにじんだ。

「画鋲、押さえて!」

彼が叫び、私は反射的に彼のポスターへ手を伸ばした。彼も私の写真の上へ透明なファイルをかぶせる。

互いのポスターを守りながら、私たちは掲示板の小さな庇に肩を押し込んだ。制服の背中は完全に濡れていた。

「自分のを先にやれば?」

「そっちも」

「私は負けたくないんだけど」

「俺だって」

雨で髪が額に張りついた顔は、演説中よりずっと頼りなく見えた。

昼休みまで、私たちは壇上で相手の欠点を遠回しに並べていた。彼は理想論ばかり、私は実績ばかり。廊下ですれ違っても笑わなかった。

彼のポスターの下半分が破れた。

私は自分の掲示用テープをちぎり、裏から貼った。

「これで一票減った」

「どうして」

「敵に助けられた候補は格好悪い」

「じゃあ私も減るね」

見ると、私の写真の口元が雨で溶けていた。彼は油性ペンを出し、慎重に線を引き直した。

「笑いすぎ」

「元からこんな顔」

「演説よりこっちのほうがいい」

「何それ」

「本音っぽい」

雷が鳴り、二人同時に肩をすくめた。

雨が弱まるまで、政策の話をした。批判するためではなく、実際に何を変えたいのかを初めて聞いた。彼が図書室の開室時間を延ばしたい理由も、私が購買の予約制度にこだわる理由も、ポスターには書いていない話だった。

「どっちが勝っても」

彼が言った。

「片方の案、捨てるのやめない?」

「連立政権?」

「高校の生徒会で大げさだろ」

「じゃあ、雨宿り協定」

手を差し出すと、彼は濡れた手で握り返した。

投票日、掲示板には新品のポスターが貼られた。先生が印刷し直してくれたのだ。

けれど私たちは、にじんだ二枚を捨てず、生徒会室の壁に並べた。

選挙には勝敗がついた。

雨の日に初めて聞いた互いの公約だけは、どちらが勝ったあとも消えなかった。