電波の向こうの二股相談

【深夜ラジオ『眠れぬ人の相談室』放送記録】

司会・万城目:

今夜の相談者は、匿名希望「左右どちらも捨てられない」さんです。

相談者:

僕、二人と同時につき合っていて、どちらにも隠しています。

万城目:

なるほど。右と左ですね。

相談者:

名前は伏せますが、Aは長いつき合いで安心感がある。Bは新しくて刺激的です。

万城目:

古い機種と新機種。

相談者:

機種?

万城目:

続けてください。

相談者:

Aは少し重い。でも僕の癖を全部知ってる。Bは軽くて反応が速い。

万城目:

完全に乗り換え時です。

相談者:

そんな簡単に切れません。Aには思い出が詰まってる。

万城目:

データ移行しましょう。

相談者:

データ?

万城目:

連絡先や写真です。

相談者:

写真は両方にあります。見つかったら終わりです。

万城目:

クラウドへ。

相談者:

雲の上へ逃げろと?

万城目:

物理的に逃げないでください。

相談者:

最近、Bが「私だけを見て」と言うんです。でもAも毎朝、起こしてくれる。

万城目:

アラーム設定を切ればいい。

相談者:

人の心を何だと思ってるんですか!

万城目:

こちらの台詞です。あなた、スマートフォン二台の相談では?

相談者:

恋人二人です。

万城目:

恋人が毎朝アラームを?

相談者:

Aは起こしに来ます。合鍵を持ってるので。

万城目:

それはまずい。

相談者:

Bも合鍵を欲しがっています。

万城目:

さらにまずい。

相談者:

どう隠せばいいでしょう。

万城目:

隠し方は助言できません。正直に話してください。

相談者:

二人とも失うかも。

万城目:

失うべきものを抱えて眠れないなら、今夜が手放す時です。

相談者:

深夜ラジオらしく急にいいこと言いますね。

万城目:

台本にありました。

相談者:

実は今、二人が同じ部屋にいます。

万城目:

なぜ電話できているんです?

女性A:

スピーカーです。

女性B:

全部聞きました。

相談者:

先生、助けて。

万城目:

まず電源を切ってください。

女性A:

切らないで。最後に質問があります。

万城目:

どうぞ。

女性A:

この人、私にはBを「仕事用」と説明しました。

女性B:

私にはAを「古い端末」と。

万城目:

最初から私の誤解ではなかったようですね。

女性二人:

いえ、説明は完璧でした。

 その直後、通話が切れた。

 翌週、番組宛てにスマートフォンが一台届いた。初期化済みだった。