一パーセントの鏡
守護光線が迫り、鐘ヶ江ミツキはひび割れた鏡盾を正面へ向けた。
《反射盾》
受けた光線を、反射率ぶんだけ送り返します。
《欠けた鏡盾》
防御力:1
反射率:1%
初期村の不良品。
百%反射の神盾を使った者は、守護者アストラを一撃で焼き払った。だが背後の門まで溶け、攻略は必ず失敗した。門を開くには、中央の小さな受光石へ光を当てなければならない。
「一%じゃボスに傷もつかない!」
「傷つけないために使う」
光線が鏡盾へ当たる。九十九%は盾を貫き、ミツキのHPを赤まで削った。残り一%だけが細い糸になって返り、受光石へ届く。
石が一つ点灯する。必要数は三。
アストラの二射目。ミツキは足を引きずり、角度を変える。回復役が盾を交換しようとするが断る。反射率が高ければ、石ではなく門を壊す。
二つ目が灯る。
三射目の前に盾へ大きな亀裂が走る。耐久値一。次で壊れる。
アストラが光を溜める。その顔は敵意ではなく、何かを確かめるように見えた。ミツキは門ではなく、守護者自身の胸にある三つ目の受光石へ盾を向ける。
光線。盾が砕け、ミツキも倒れる。
一%の反射だけがアストラへ戻る。胸の石が灯り、守護者は攻撃を止めた。門が開き、内部から避難用の転送陣が現れる。
アストラは焼かれた傷一つないまま、倒れたミツキを抱き上げた。
《守護者アストラ討伐失敗》
《認証光三点を受領》
アストラはミツキを抱いたまま、砕けた鏡片を拾い集めた。そこには守護者の顔と攻略者の顔が、細切れに同じ大きさで映っている。
「百%返されれば、私は攻撃を続けられなかった。壊れて終わるだけだった」
一%は抵抗にも復讐にも足りない。だからこそ、これは受け取ったという返事になった。
門を通る者たちは、神盾ではなく小さな鏡片を一枚ずつ認証札として持った。
完全には返さず、受けたものの一部だけを返す。その加減を、守護者は対話と呼んだ。砕けた鏡にも、門の向こうの朝は映った。
《門を開放――求められていたのは敵を倒す力ではなく、敵の光を壊さず返せる最小の応答です》