七つの血月を摘み取る
果実摘みフォルナは、高枝鋏一本で王立果樹園を回っていた。
熟れすぎた実を先に落とし、枝を守る。それが仕事だ。だが貴族は大きな実ほど価値があると思い、彼女が摘果するたび盗人と呼んだ。収穫祭の直前、フォルナは王宮から解雇された。
技能も、果樹園にしか要らないとされた。
【遠摘果:一本の枝につく熟しすぎた実だけを、枝を傷つけず摘み取る。実の数と高さは問わない】
その夜、空に七つの赤い月が現れた。
宮廷占星術師は吉兆だと宣言したが、月は時間とともに膨らみ、表面へ黒い亀裂を増やしていく。敵国の呪術師が空の魔力脈へ実らせた《血月果》だった。夜明けに破裂し、血の雨で国中を魔物へ変える。
弓も魔法も届かない。占星術師は予言を外した責任を隠すため、空を見た者を牢へ入れ始めた。
フォルナには、七つの月をつなぐ細い影が見えた。空の彼方に伸びる一本の枝だ。実は赤黒く、触れなくても熟れすぎていると分かる。
彼女は解雇通知を高枝鋏の柄へ巻き、王宮の屋根へ上った。
「落ちるまで待つのは、収穫じゃない」
鋏を一度開いて閉じる。
七つの血月が、空から同時に消えた。
次の瞬間、フォルナの足元へ赤い果実が七個転がる。どれも林檎ほどの大きさになり、黒い亀裂の中で呪いが暴れていた。枝は傷ついていないため、本物の月と星には揺れ一つない。
彼女は果実を王立果樹園の古い発酵穴へ投げ、石蓋を閉じた。呪いは土と灰に分解され、穴の上では枯れた木が白い花を咲かせた。
逮捕命令を持ってきた占星術師の頭へ、本物の月光がまっすぐ差した。群衆は空に月が一つしかないことを確認し、今度は彼の予言書を見た。
発酵穴から立った白い花の香りは、血月の呪いを受けかけた者の熱まで下げた。フォルナを盗人と呼んだ貴族たちは、摘まなければ枝ごと国が折れていたと知る。解雇通知は果樹園の焚き付けにされ、代わりに七つの空籠が王宮正面へ飾られた。
《職業が【果実摘み】から【天果収穫王】へ書き換わりました》