三本目の焦げ跡

通販サイトの大型セール開始まで一時間、蒲生伽奈は充電ケーブルのレビュー写真を三枚並べた。

三人とも、差し込み口の同じ位置が茶色く焦げている。商品担当はレビューを〈使用環境による変色〉として非表示にするよう指示した。

「今日だけで二万本売る商品だよ。星一つを上に残したら、数字が落ちる」

後輩は一件目へ定型文を貼っていた。〈長時間の使用を避け、純正機器でお試しください〉。しかし購入者の写真には、会社が推奨する純正機器が写っている。

伽奈は返品管理を開いた。焦げた三本は、すべて製造番号の末尾が同じだった。問い合わせに至っていない返品にも、〈熱い〉〈匂いがした〉という自由記述が七件ある。商品ページでは、同じ製造分がセール在庫の先頭に設定されていた。

倉庫から届いた返品箱の一つには、溶けた樹脂が透明袋へ貼りついていた。購入者は就寝中の充電を避けたため火事にはならなかった、とメモしている。星一つの文章は売上を邪魔する数字ではなく、まだ起きていない事故の手前から届いた連絡だった。

「返信はまだ送らないで。星の数じゃなく、番号を見よう」

伽奈は後輩へ製造番号を検索させ、自分は販売停止の申請を上げた。商品担当はすぐ席まで来た。

「故障率としては低い。止めるなら、原因が確定してからにして」

「確定するまで売り続ける商品ではありません」

伽奈は対象ロットを在庫から外し、セールの掲載枠を別商品へ差し替えた。三人の購入者には非表示通知ではなく、使用中止と回収の案内を送った。後輩が書いた謝罪文から、使用方法を疑う一文を削り、会社側で調査する主語を入れた。

夕方、仕入れ先から、端子を固定する樹脂の配合を変更したと連絡が来た。熱に弱い材料が混ざった可能性があるという。

伽奈は十件の記録を一つの事故票へまとめ、レビュー担当が同じ部位の写真を二件以上見たら、安全部門へ自動通知する手順を提出した。

セール画面の数字は下がった。代わりに、社内公募の〈商品安全担当〉が開いた。

伽奈はその日のうちに応募書類を送った。