付き添い番号

総合病院の受付AIは、予約した患者に番号票を発行した。

付き添いの家族は患者ではない。

何時間待っても、診察対象には数えない。

窓口で働く看護師は、毎日AIへ同じ注意をした。

「『私は大丈夫』って言う人ほど、よく見て」

もちろん機械に通じるはずはなかった。

ある冬、夫の通院へ付き添う女性が来た。

薬の説明を聞き、車椅子を押し、会計まで一人で済ませる。

看護師が休むよう勧めても、

「私は大丈夫です」

と笑った。

受付機へ夫の診察券を戻した瞬間、もう一枚、番号票が出た。

「付き添い一番」

そんな区分はない。

女性は間違いだと思い、紙を捨てた。

翌月も「私は大丈夫」と言った直後、同じ番号票が出た。

三度目、看護師が血圧を測ると、すぐに診察が必要な数値だった。

女性は入院を免れたが、医師から休養を命じられた。

夫は初めて、妻が自分より疲れていたことを知った。

それ以来、受付AIは一日に一人だけ、

「私は大丈夫」

と言った付き添いへ番号票を出すようになった。

付き添い二番は、母親の検査結果ばかり気にして朝から何も食べていない息子。

付き添い三番は、子どもの前で泣かないよう呼吸を浅くしていた父親。

番号を取った人は最初、必ず困った顔をした。

「患者は私じゃありません」

看護師は答えた。

「今日は、あなたもです」

病院側は誤発券を止めようとした。

AIの言語認識から「大丈夫」を削除した。

すると番号票には文字ではなく、小さな空欄だけが印刷された。

看護師たちはその紙を見れば意味が分かった。

最初の女性が夫と一緒に来た春、夫が車椅子ではなく自分の足で歩いていた。

受付前で夫が妻へ尋ねた。

「今日は大丈夫か」

妻は少し考え、

「疲れてる。帰ったら昼寝したい」

と答えた。

番号票は出なかった。

夫は笑い、妻の鞄を持った。

受付AIの画面に、ほんの一瞬だけ、

「受付不要」

と表示された。

看護師は機械へ手を当てた。

「よく見てたね」

AIは通常画面へ戻り、次の患者番号を呼んだ。

病気の名前が付かない疲れもある。

助けを求めるほどではないと、自分で小さくしてしまう痛みもある。

病院の機械は治せない。

ただ一日に一人だけ、その人を待合室の景色から、診てもらうべき人へ数え直した。