会議名は「送別会」

私の昇進査定は、なぜか「送別会」という名のオンライン会議で行われた。

課長は、使い回した予定の件名を直し忘れただけだと言った。参加者の中には「退職者」という黒いタイルもある。古い招待先が残ったのだろう、と誰も気にしなかった。

課長は私の評価を読み上げた。

業務改善への貢献が乏しく、新しい在庫管理方式も課長自身が設計したため、主任昇進は見送るという。

その方式は、私が二年前から作ってきたものだった。反論すると課長は言った。

「証拠がある。正式ファイルの作成者は私だ」

共有された企画書のプロパティには、確かに課長の名前がある。

すると退職者のタイルから、年配の声がした。

「表紙を作った人間が、設計者になるのか」

課長の前任者だった。昨年の送別会で使った会議リンクが、今回も同じ予定に残っていたらしい。

課長は部外者を追い出そうとした。

前任者は、その前に古い共有ファイルを表示した。私が作った試算、現場の写真、試験導入の記録。更新時刻は課長が赴任する半年前で、コメント欄には前任者の承認がある。

課長の正式ファイルは、私の資料を複製し、表紙だけ差し替えたものだった。

「退職者の証言は無効だ」

課長が叫ぶ。

私は会議予約履歴を開いた。課長は今日の査定を新規作成せず、送別会の予定を意図的に再利用していた。備考には《前任者のアカウントは失効済み。過去ログを見られない》と自分で書いている。

だが前任者は会社から名誉顧問用のゲスト権限を与えられており、失効していなかった。

さらに送別会の録画には、課長が着任直後、私の試作品を前任者から引き継ぐ場面が映っていた。《完成まで彼に任せる》という言葉に、課長自身が頷いている。今日の会議名を直さなかったせいで、消したつもりの引継ぎ記録まで同じ予定から呼び戻してしまったのだ。

人事部長は版履歴を比較し、昇進見送りの欄を消した。

前任者が静かに言う。

「送別会の続きができたな。今度は、手柄を盗んだ人を送り出す番だ」

人事部長が承認を押した。

「主任昇進を決定。課長は査定業務から外します」